【民事訴訟法】裁判によらない訴訟の完結について、訴えの取り下げなどのまとめ

民事訴訟法

民事訴訟法の裁判によらない訴訟の完結について解説します。裁判によらない訴訟の完結にはどのようなものがあるか、ここで確認しましょう。

第一審の訴訟手続>裁判によらない訴訟の完結

訴えの取下げ

訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる(261条1項)。

訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない(261条2項)。

訴えの取下げは、書面でしなければならない。ただし、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない(261条3項)。

訴えは、判決が確定するまで、取り下げることができますが、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、取り下げることはできません。相手方が争う姿勢を見せている以上、一方的に取り下げることはフェアではないからです。

2項但書について、「本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない」、つまり相手方の同意を得なくても取り下げることができます。まず、本訴の取下げがあったということは、本訴原告は訴えを取下げたいという意思を持っています。このうえで、反訴原告が反訴の取下げをするときは、本訴原告は争いをしたくない意思を持っているので、同意が不要となります。

訴えの取下げは、書面でする必要があります。ただし、口頭弁論等の期日においては、裁判官書記官が、期日ごとに調書を作成しているので(160条1項)、口頭ですることを妨げないとなっています。

訴えの取り下げについて、判例は、「訴の取下は訴訟行為であるから、一般に行為者の意思の瑕疵がただちにその効力を左右するものではないが、詐欺脅迫等明らかに刑事上罰すべき他人の行為により訴の取下がなされるにいたったときは、民訴法338条1項5号の法意に照らし、その取下は無効と解すべきであ」るとしています(最判昭46.6.25)。

民訴法338条1項5号は、再審の事由について定めたもので、「刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。」としています。

訴えの取下げの効果

訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす(262条1項)。

本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない(262条2項)。

訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなされるため、既判力もなく、あとでまた訴訟を提起することができます。ただ、本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者、つまり訴訟の結果が出たときは、同一の訴えを提起することはできなくなります。

ここで、既判力があるのに、どうしてこのような条文が必要になるのか疑問に感じる方もいると思うので補則します。まず、裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をします(243条)。判決は、言渡しによってその効力を生じます(250条)。このあとに訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することはできません。

ただ、この時点では既判力はまだ生じていません。既判力の効力が生ずるのは、終局判決ではなく、確定判決です(114条1項)。

「控訴は、判決書又は第254条第2項の調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。」(285条本文)。

「判決は、控訴若しくは上告の提起、異議の申立てについて定めた期間の満了前には、確定しないものとする。」(116条1項)。

「判決の確定は、前項の期間内にした控訴の提起、同項の上告の提起又は同項の申立てにより、遮断される。」(116条2項)。

つまり、判決は、判決書等の送達を受けた日から2週間の満了前には、確定せず、判決の確定は、この期間内に控訴の提起があった場合は、遮断されるということです。

反対にいうと、判決書等の送達を受けた日から2週間が経過し、この期間内に控訴の提起がなかったときに、判決が確定することになります。このときに既判力が生じます。

まとめると、終局判決があった後、判決が確定するまでの間は、訴えを取り下げることはできますが、同一の訴えを提起することはできなくなります。

訴えの取下げの擬制

当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、1月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して2回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする(263条)。

まず、当事者双方が、口頭弁論等の期日に出頭せず、または弁論等をしないで退廷等をした場合という条件があります。当事者双方という点に注意しましょう。そして、①1月以内に期日指定の申立てをしないとき、②当事者双方が、連続して2回、口頭弁論等の期日に出頭せず、または弁論等をしないで退廷等をしたとき、訴えの取下げがあったものとみなされます。当事者双方にやる気がないのなら、訴えの取下げをしますということです。

裁判所等が定める和解条項

裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる(265条1項)。

通常の和解は、当事者の合意でしますが、当事者の共同の申立てがあるときは、裁判所等は、和解条項を定めることができます。

請求の放棄又は認諾

請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする(266条1項)。

請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる(266条2項)。

請求の放棄とは、原告が請求に理由がないことを認める裁判所に対する意思表示のことをいいます。

請求の認諾とは、被告が請求に理由があることを認める裁判所に対する意思表示のことをいいます。「100万円返してください」という訴えに対して、「わかりました」と認めるなどです。

和解調書等の効力

和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する(267条)。
SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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