【民事訴訟法】証拠について、証人尋問、当事者尋問、鑑定、書証、検証などのまとめ

民事訴訟法

民事訴訟法の証拠について解説します。証拠は全7節の大きな章です。試験対策として、重要な部分を押さえておきましょう。

第一審の訴訟手続>証拠

第1節 総則

証明することを要しない事実

裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない(179条)。

顕著な事実には、歴史的大事件や大災害などの公知の事実、裁判官が職務を行うことで知り得た職務上顕著な事実があります。

証拠の申出

証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない(180条1項)。

参考:民事書式 | 裁判所

当事者の不出頭の場合の取扱い

証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる(183条)。

調査の嘱託

裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる(186条)。

天候などの客観的事項の調査は、公正さに欠けることがないため、官庁や公署などの団体に嘱託することができます。

第2節 証人尋問

証人義務

裁判所は、特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる(190条)。

不出頭に対する過料等

証人が正当な理由なく出頭しないときは、裁判所は、決定で、これによって生じた訴訟費用の負担を命じ、かつ、10万円以下の過料に処する(192条1項)。

不出頭に対する罰金等

証人が正当な理由なく出頭しないときは、10万円以下の罰金又は拘留に処する(193条1項)。

勾引

裁判所は、正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命ずることができる(194条1項)。

正当な理由のない証人の不出頭に対しては、行政罰である過料や刑罰である罰金、勾引されることがあります。

宣誓

証人には、特別の定めがある場合を除き、宣誓をさせなければならない(201条1項)。

16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができない(201条2項)。

証人は、偽りを述べないことを宣誓する必要があります。もし、宣誓をしたうえで虚偽の事実を述べると、偽証罪に問われます。このことから、宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合には、宣誓をさせることができないとされています。

書類に基づく陳述の禁止

証人は、書類に基づいて陳述することができない。ただし、裁判長の許可を受けたときは、この限りでない(203条)。

証人は、自身の記憶を基に陳述することが求められます。そのため、原則として、書類に基づいて陳述をすることはできません。ただし、裁判長の許可を受けたときはこの限りではありません。

尋問に代わる書面の提出

裁判所は、相当と認める場合において、当事者に異議がないときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる(205条)。

証人が住んでいる場所が遠いなどの場合があるため、当事者に異議がないときは、書面の提出ができるようになっています。

第3節 当事者尋問

当事者本人の尋問

裁判所は、申立てにより又は職権で当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる(207条1項)。

証人尋問では宣誓をさせなければならなかったのに対し、当事者尋問では、宣誓をさせることができるとなっています。当事者の場合、自分の利害に関することであるから、虚偽の陳述をすることは仕方がないと思われるからです。

不出頭等の効果

当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる(208条)。

証人が、正当な理由なく、出頭しない場合などのときは、過料や罰金、勾引がありましたが、当事者の場合は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができます。

法定代理人の尋問

この法律中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。ただし、当事者本人を尋問することを妨げない(211条)。

法定代理人は、本人の代わりのため、法定代理人に対する尋問は当事者尋問の規定を準用します。ただし、法定代理人がいる場合でも当事者本人を尋問することはできます。たとえば、未成年が当事者の場合、その法定代理人である親を尋問するときは当事者尋問の規定を準用し、当事者本人である子も尋問することができるということです。

第4節 鑑定

鑑定義務

鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う(212条1項)。

鑑定人の陳述の方式等

裁判長は、鑑定人に、書面又は口頭で、意見を述べさせることができる(215条1項)。

証人尋問の規定の準用

第192条及び第193条の規定は鑑定人が正当な理由なく出頭しない場合鑑定人が宣誓を拒む場合及び鑑定拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に鑑定人が正当な理由なく鑑定を拒む場合について準用する(216条)。

証人尋問の規定の準用はいくつかありますが、ここでは、192条と193条、つまり過料や罰金に処せられるものを押さえておきましょう。鑑定人の場合は、194条の勾引がないという点が重要です。証人はただひとりしかいないのに対して、鑑定人は代替できると考えると理解しやすいと思います。

第5節 書証

書証の申出

書証の申出は、文書を提出し、又は文書の所持者にその提出を命ずることを申し立ててしなければならない(219条)。

文書提出義務

次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない(220条)。

① 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
② 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
③ 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。
④ 前3号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第196条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第197条第1項第2号に規定する事実又は同項第3号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

挙証者とは、文書提出命令を申し立てる人のことです。

4号について、文書提出義務の例外事由、つまり、4号のイからホのいずれかに該当すれば、文書提出義務はないということになります。イは、196条の証言拒絶権に該当する文書です。ハは、医師や弁護士などで、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書です。ニは、日記帳などを想像するとわかりやすいと思います。また、銀行の貸出稟議書なども該当するとされています。

文書提出命令等

裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる(223条1項)。

裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない(223条2項)。

裁判所は、公務員の職務上の秘密に関する文書について第220条第4号に掲げる場合であることを文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には、その申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当するかどうかについて、当該監督官庁の意見を聴かなければならない。この場合において、当該監督官庁は、当該文書が同号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べるときは、その理由を示さなければならない(223条3項)。

前項の場合において、当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第220条第4号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができる(223条4項)。

① 国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ

② 犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ

裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第220条第4号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない(223条6項)。

文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる(223条7項)。

文書提出命令等について、整理しましょう。前提として、文書提出義務があるものは文書を提出しないといけないけれど、文書の所持者と利益衡量をしているという価値判断を持っておくことが重要になります。

まず、裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、文書提出命令をします。これが1項の部分です。このとき、当事者ではなく第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、第三者を保護する必要があるので、審尋しなければなりません。これが2項の部分です。

そして、裁判所は、公務員の職務上の秘密に関する文書について第220条第4号に掲げる場合であること(文書提出義務の例外にあたらないこと)を文書の提出義務の原因とする文書提出命令の申立てがあった場合には、当該文書が同号ロに掲げる文書(公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの)に該当するかどうかについて、当該監督官庁の意見を聴かなければなりません。

当該監督官庁が当該文書の提出により、国の安全が害されるなどのおそれがあることを理由として当該文書が第220条第4号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができます。

条文構造が読みにくいので、確認しましょう。220条第4号は、「文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき」と定めています。つまり、「220条第4号ロに該当する」ということは、「220条第4号」に該当しないことになり、文書提出義務がないということになります。

裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第220条第4号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができます。気をつけたいのは、文書の提出命令ではなく、提示である点です。これをイン・カメラ手続といいます。イン・カメラとは、非公開の審理という意味です。裁判所が、イン・カメラ手続により、文書提出命令の申立てに係る文書が第220条第4号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかを判断します。その結果により、文書提出命令を出すかどうかを決めます。

イン・カメラ手続は非公開なので、何人も、その提示された文書の開示を求めることができません。

文書提出命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができます。ここも読みにくいので確認しましょう。「文書提出命令の申立て」というのは、「文書提出命令を出してください」という申立てです。これについての決定、に対して、即時抗告ができるということです。文書提出命令が出れば、文書提出命令を出された人は「どうして出すんですか」となり、文書提出命令が出なければ、文書提出命令の申立てをした人は「どうして出ないんですか」となります。

本試験対策として、それほど細かいことが問われる部分ではありませんが、広く浅い知識が問われる部分なので、解説しました。民事訴訟は、重要なものからそうでないものまでさまざまな訴訟が提起されるので、「公務員の職務上の秘密に関する文書について」は、特に慎重に利益衡量されていることがわかります。

当事者が文書提出命令に従わない場合等の効果

当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる(224条1項)。

当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務がある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも、前項と同様とする(224条2項)。

前2項に規定する場合において、相手方が、当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、その事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる(224条3項)。

3項について、相手方というのは、文書提出命令を申立てた人のことです。当事者が文書提出命令に従わなかったり、提出の義務がある文書を滅失させた場合、相手方が文書の記載に関して具体的な主張をすることや証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所は、相手方の主張を真実と認めることができます。

第三者が文書提出命令に従わない場合の過料

第三者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、決定で、20万円以下の過料に処する(225条1項)。

第三者が文書提出命令に従わないときは、過料になります。当事者のときは相手方の主張を真実と認めることができ、第三者のときは過料になるのは、証人尋問のときと同じです。

文書送付の嘱託

書証の申出は、第219条[書証の申出]の規定にかかわらず、文書の所持者にその文書の送付を嘱託することを申し立ててすることができる。ただし、当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合は、この限りでない(226条)。

命令を出さずとも、お願いすれば出してくれそうなときは、嘱託することを申し立てることができます。嘱託とは、お願いするというイメージです。ただし、文書の正本または謄本の交付を求めることができる場合、たとえば登記事項証明書などは、交付を求めることができるので、この限りでない、つまり、嘱託することを申し立てることができません。書類を取り寄せればよいということです。

文書の成立

文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない(228条1項)。

文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する(228条2項)。

公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる(228条3項)。

私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する(228条4項)。

公文書については、公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立したと推定されます。私文書については、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定されます。

文書に準ずる物件への準用

この節の規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープその他の情報を表すために作成された物件で文書でないものについて準用する(231条)。

第6節 検証

検証の目的の提示等

第219条、第223条、第224条、第226条及び第227条の規定は、検証の目的の提示又は送付について準用する(232条)。

検証とは、裁判官が五官の作用によって検証物の性状を検査して証拠資料を取得する証拠調べをいいます。検証は、書証の申出(219条)、文書提出命令等(223条)などが準用されます。

検証の際の鑑定

裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、検証をするに当たり、必要があると認めるときは、鑑定を命ずることができる(233条)。

第7節 証拠保全

証拠保全

裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる(234条)。

管轄裁判所等

訴えの提起後における証拠保全の申立ては、その証拠を使用すべき審級の裁判所にしなければならない。ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続若しくは書面による準備手続に付された後口頭弁論の終結に至るまでの間は、受訴裁判所にしなければならない(235条1項)。

訴えの提起前における証拠保全の申立ては、尋問を受けるべき者若しくは文書を所持する者の居所又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にしなければならない(235条2項)。

急迫の事情がある場合には、訴えの提起後であっても、前項の地方裁判所又は簡易裁判所に証拠保全の申立てをすることができる(235条3項)。

訴えの提起後は、その証拠を使用すべき審級の裁判所に証拠保全の申立てをします。

訴えの提起前は、まだ裁判所が決まっていないので、尋問を受けるべき者や検証物の所在地を管轄する裁判所にします。

職権による証拠保全

裁判所は、必要があると認めるときは、訴訟の係属中、職権で証拠保全の決定をすることができる(237条)。

不服申立ての不許

証拠保全の決定に対しては、不服を申し立てることができない(238条)。

証拠保全は、「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情がある」ときにします。証拠保全の決定については、さらに不服を申し立てることができると、証拠保全の趣旨が全うされない、つまり急いですることができないため、不服を申し立てることはできません。

一方、「口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができる」(328条1項)ため、証拠保全を却下した決定に対しては、抗告をすることができます。なお、ここではかんたんにとどめますが、判決に対する不服申立てを控訴や上告といい、決定や命令に対する不服申立てを抗告といいます。どちらも上級裁判所に再審理を求めます。

期日の呼出し

証拠調べの期日には、申立人及び相手方を呼び出さなければならない。ただし、急速を要する場合は、この限りでない(240条)。

証拠保全の費用

証拠保全に関する費用は、訴訟費用の一部とする(241条)。

口頭弁論における再尋問

証拠保全の手続において尋問をした証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない(242条)。

証拠保全は緊急であり、受訴裁判所が行うとは限らない、相手方の立会いがないため、当事者が口頭弁論における尋問の申出をしたときは、裁判所は、尋問をしなければならないとされています。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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