民事訴訟法の控訴について解説します。前回までで、第一審の訴訟手続が終わりました。今回から、第一審の結果に不服を持っている当事者が行う上訴について見ていきます。今回は、その中で第一審の終局判決に対する上訴である控訴です。難しいことはないので、ひとつずつ条文を押さえておきましょう。
目次
控訴をすることができる判決等
訴訟費用の負担の裁判に対する控訴の制限
控訴権の放棄
控訴期間
この2週間内に控訴を提起することで、判決の確定が遮断されます(116条2項)。
控訴提起の方式
第一審裁判所による控訴の却下
口頭弁論を経ない控訴の却下
控訴の取下げ
控訴の取下げがあっても、訴訟の取下げをしたことにはならない点に注意しましょう。あくまで控訴の取下げであり、第一審の判決が確定することになります。
控訴の取下げは、相手方の同意は不要です。第一審で訴えの取下げをするとき、相手方が本案について準備書面を提出したあとは、相手方の同意を得なければ、その効力を生じませんでした(261条2項本文)。一方、控訴は、後述するように不利益変更禁止の原則があるため(304条)、控訴人にとって第一審判決より不利、つまり被控訴人にとって有利になることはありません。そのため、相手方である被控訴人の同意は不要になります。
附帯控訴
附帯控訴は、被控訴人が、原判決を自己のために有利に変更することを求めてするものをいいます。前述のように、控訴は、不利益変更禁止の原則があるため、控訴人にとって、第一審判決より不利になることはありません。逆にいうと、被控訴人にとっては不利になるということです。そのため、被控訴人は、自分にとっても有利に変更できるよう附帯控訴が認められています。
控訴棄却
第一審判決の取消し及び変更の範囲
控訴審は、不服申立ての限度において行われます。そのため、控訴人にとっては、第一審判決より不利益に変更されることはなくなります。これを不利益変更禁止の原則といいます。反対の視点から見ると、被控訴人にとっては、不利益にしか変更されないため、先ほどの附帯控訴が認められています。
第一審判決が不当な場合の取消し
事件の差戻し
このあたりは、直接問われるところではありませんが、憲法などの判決文を読むときに理解が必要になるところなので言及します。キーワードは、三審制です。もし、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合、控訴審が本案について判断をすると、当事者は、本案について、控訴審と上告審の2回しか裁判が受けられないことになります(却下判決は本案について判断していません)。そのため、もし訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差戻して、もう一度、本案について裁判を行ってもらう必要があるのです。