【民事訴訟法】手形訴訟及び小切手訴訟に関する特則について、異議などのまとめ

民事訴訟法

民事訴訟法の手形訴訟及び小切手訴訟に関する特則について解説します。司法書士試験は、手形訴訟について出題が多くされるので、通常の訴訟と比較してどのように違うのかを押さえましょう。なお、小切手訴訟は、手形訴訟が準用されるので、省略します。

手形訴訟の要件

手形による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求を目的とする訴えについては、手形訴訟による審理及び裁判を求めることができる(350条1項)。

手形訴訟は、手形による金銭の支払の請求を目的とする訴えのときにできます。手形訴訟は、通常の訴訟と比較して簡易迅速になっているのが特徴です。なお、手形による金銭の支払の請求を目的とする訴えであっても、通常の訴訟を選ぶこともできる点には注意しましょう。

参考:3_1手形・小切手訴訟の手続の概要 | 裁判所

反訴の禁止

手形訴訟においては、反訴を提起することができない(351条)。

手形訴訟は、「やむを得ない事由がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。」とされています(規則214条)。そのため、訴訟が長引く反訴は提起することができないとされています。

参考:民事訴訟規則

証拠調べの制限

手形訴訟においては、証拠調べは、書証に限りすることができる(352条1項)。

文書の提出の命令又は送付の嘱託は、することができない(352条2項前段)。

文書の成立の真否又は手形の提示に関する事実については、申立てにより、当事者本人尋問することができる(352条3項)。

証拠調べの嘱託は、することができない(352条4項前段)。

前各項の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない(352条5項)。

ここでも、手形訴訟においてできることが制限されていることがわかります。一点、証拠調べは、書証に限りすることができますが、文書の成立の真否や手形の提示に関する事実については、当事者本人を尋問することができます。その場にいる当事者に尋問をしても手続が長引くことはないと考えると理解しやすいと思います。

通常の手続への移行

原告は、口頭弁論の終結に至るまで、被告の承諾を要しないで、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる(353条1項)。

訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する(353条2項)。

手形訴訟は、原則、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければなりません。そこで、原告が、もう少しきちんと証拠調べ等をしてもらいたいときは、通常の手続に移行させることができるようになっています。

口頭弁論を経ない訴えの却下

請求の全部又は一部が手形訴訟による審理及び裁判をすることができないものであるときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えの全部又は一部を却下することができる(355条1項)。

手形訴訟にふさわしくないときは、判決で、訴えが却下されます。手形訴訟にふさわしくないという点が次以降の条文につながるポイントになります。

控訴の禁止

手形訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。ただし、前条第1項の判決を除き、訴えを却下した判決に対しては、この限りでない(356条)。

手形訴訟は、簡易迅速になっているため、終局判決に対しては、控訴をできません。ただし、訴えを却下した判決に対してはこの限りでない、つまり控訴ができるようになっています。この場合も「前条第1項の判決を除き」となっています。前条第1項は、手形訴訟にふさわしくないという理由で却下したものでした。この場合、手形訴訟にふさわしくないだけで、通常の訴訟はできるので、控訴はできないようになっています。本試験では、却下した理由に注意しましょう。

異議の申立て

手形訴訟の終局判決に対しては、訴えを却下した判決を除き、判決書又は調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない(357条)。

異議の取下げ

異議は、通常の手続による第一審の終局判決があるまで取り下げることができる(360条1項)。

異議の取下げは、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない(360条2項)。

異議後の手続

適法な異議があったときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復する。この場合においては、通常の手続によりその審理及び裁判をする(361条)。

前述のように、手形訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができません(356条)。そこで、終局判決に対して不服がある人はどうすればいいのかというと、異議を申し立てることができます。異議を申し立てると、通常の手続により審理及び裁判をします。つまり、手形訴訟から通常の第一審になるということです。このことから、通常の裁判のときと同じように、相手方の同意を得なければ異議の取下げができないようになっています。ここは、ぜひ暗記ではなく理解で臨みたいところです。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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