【民事訴訟法】訴訟手続について、専門委員や送達、既判力などのまとめ

民事訴訟法

民事訴訟法の訴訟手続について解説します。訴訟手続では、専門委員や送達の方法、そして既判力などがあります。既判力は最初は理解しにくいところなので、わからなくても気にせず、繰り返し学習することを前提にして先に進めることを優先しましょう。

総則>訴訟手続

第1節 訴訟の審理等

口頭弁論の必要性

当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める(87条1項)。

口頭弁論とは、公開の法廷で、当事者双方が、口頭で、裁判所の面前で弁論や証拠手続をすることです。裁判をするには、口頭弁論をしなければなりません。口頭弁論が真実発見に適しているからです。ただし、決定のときは、任意となります。決定とは、手続等に関する裁判所の裁判です。たとえば、管轄の指定などがあります。決定は、簡易・迅速に進める必要性があるため、口頭弁論は任意的となっています。

映像と音声の送受信による通話の方法による口頭弁論等

裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、口頭弁論の期日における手続を行うことができる(87条の2第1項)。

裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、審尋の期日における手続を行うことができる(87条の2第2項)。

ウェブ会議等による手続です。1項と2項で、重要度によって、映像と音声なのか、音声なのかが分かれているのがポイントです。

和解の試み等

裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる(89条1項)。

裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、和解の期日における手続を行うことができる(89条2項)。

訴訟手続に関する異議権の喪失

当事者が訴訟手続に関する規定の違反を知り、又は知ることができた場合において、遅滞なく異議を述べないときは、これを述べる権利を失う。ただし、放棄することができないものについては、この限りでない(90条)。

当事者が、訴訟手続に関する規定の違反がある場合に、異議を述べてその無効を主張しうる訴訟上の権能のことを責問権といいます。しかし、当事者が訴訟手続に関する規定の違反を知り、または知ることができた場合において、遅滞なく異議を述べないときは、訴訟手続が不安定になるため、異議を述べる権利を失います。ただし、放棄することができないもの、たとえば、専属管轄(13条、20条)や裁判官の除斥(23条)など公益に関する規定の違反については、このかぎりでない、つまり訴訟が進んでからでも異議を述べる権利を失わないとされています。

責問権については、条文が少し読みにくいので、①まずは原則として責問権がある、②しかし、90条本文が定めるように違反を知り、または知ることができた場合で、遅滞なく異議を述べないときは、権利を失う。③ただし、放棄することができないものについては権利を失わない、といったように、段階で押さえられるようにしましょう。

訴訟記録の閲覧等

何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる(91条1項)。

公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については、当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り、前項の規定による請求をすることができる(91条2項)。

当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、訴訟記録の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付を請求することができる(91条3項)。

秘密保護のための閲覧等の制限

次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「秘密記載部分の閲覧等」という。)の請求をすることができる者を当事者に限ることができる(92条1項)。

① 訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され、又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。

② 訴訟記録中に当事者が保有する営業秘密が記載され、又は記録されていること。

第2節 専門委員等

専門委員の関与

裁判所は、争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、専門委員の説明は、裁判長が書面により又は口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日において口頭でさせなければならない(92条の2第1項)。

裁判所は、証拠調べをするに当たり、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、証拠調べの期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人質問の期日において専門委員に説明をさせるときは、裁判長は、当事者の同意を得て、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするために必要な事項について専門委員が証人、当事者本人又は鑑定人に対し直接に問いを発することを許すことができる(92条の2第2項)。

裁判所は、和解を試みるに当たり、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、決定で、当事者双方が立ち会うことができる和解を試みる期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる(92条の2第3項)。

医療関係訴訟など高い専門性が求められる訴訟において、専門的知見を裁判所に提供するために「専門委員制度」が設けられています。専門委員制度は、専門委員の関与の度合いによって、当事者の意見の反映の差をつけているのがポイントになります。

①まず、裁判所は、必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、専門委員を手続に関与させることができます。これが1項と2項の前段の部分です。

②次に、裁判所は、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、専門委員が証人、当事者本人又は鑑定人に対し直接に問いを発することを許すことができます。これが2項の後段部分にあたります。証拠調べについては、手続に関与するまでは、「当事者の意見を聴いて」ですが、直接に問いを発するまで関与する場合は、「当事者の同意を得て」というように程度に差ができています。

③そして、裁判所は、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、和解を試みる期日において、専門委員を手続に関与させることができます。これが3項の部分です。和解に関与する場合は、同意を得る必要があります。和解の場合も条文は「手続に関与」となっているので、当事者の意見を聴いてと混同しないように気をつけましょう。和解は、当事者同士の意思が大切なのであり、専門委員を関与させる重要性が下がる(だから当事者の同意が必要)と考えると理解しやすいと思います。

第3節 期日及び期間

期日の指定及び変更

期日は、申立てにより又は職権で裁判長が指定する(93条1項)。

前項の規定にかかわらず、弁論準備手続を経た口頭弁論の期日の変更は、やむを得ない事由がある場合でなければ、許すことができない(93条4項)。

期日の呼出し

期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする(94条1項)。

期日とは、当事者などが、裁判所など一定の場所に集まって、訴訟行為を行うために定められた日時のことをいいます。たとえば、「口頭弁論期日」は、口頭弁論をする日ということになります。期日という言葉は、「選挙期日」のように日常的にも使われますが、もうひとつの、その時までに完了している締め切りのような意味で捉えないように気をつけましょう。

第4節 送達

職権送達の原則等

送達は、特別の定めがある場合を除き、職権でする(98条1項)。

送達とは、訴訟関係人に対し、訴訟上の書類の内容を知らせるために一定の方式によって書類を交付することをいいます。

裁判所書記官による送達

裁判所書記官は、その所属する裁判所の事件について出頭した者に対しては、自ら送達をすることができる(100条)。

交付送達の原則

送達は、特別の定めがある場合を除き、送達を受けるべき者に送達すべき書類を交付してする(101条)。

ここで、原則は交付送達であることがわかりました。

訴訟無能力者等に対する送達

訴訟無能力者に対する送達は、その法定代理人にする(102条1項)。

数人が共同して代理権を行うべき場合には、送達は、その一人にすれば足りる(102条2項)。

ここでは、例外が定められています。訴訟無能力者は、自ら訴訟ができないので、その法定代理人にします。

送達場所

送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(以下この節において「住所等」という。)においてする。ただし、法定代理人に対する送達は、本人の営業所又は事務所においてもすることができる(103条1項)。

送達場所等の届出

当事者、法定代理人又は訴訟代理人は、送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を受訴裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる(104条1項)。

前項前段の規定による届出があった場合には、送達は、前条の規定にかかわらず、その届出に係る場所においてする(104条2項)。

条文だと難しく感じますが、当事者等は、送達を受けるべき場所を届け出る必要があり、そこに送達されるということです。

出会送達

前2条の規定にかかわらず、送達を受けるべき者で日本国内に住所等を有することが明らかでないものに対する送達は、その者に出会った場所においてすることができる。日本国内に住所等を有することが明らかな者又は同項前段の規定による届出をした者が送達を受けることを拒まないときも、同様とする(105条)。

こちらも条文だと難しく感じますが、送達場所等を届け出た者が送達を受けることを拒まなければ、出会送達ができるということです。

補充送達及び差置送達

就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる(106条1項前段)。

就業場所において送達を受けるべき者に出会わない場合において、他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができる(106条2項)。

送達を受けるべき者又は第1項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる(106条3項)。

民訴法の学習において、条文を無視して暗記させられやすい部分です。この機会に条文に立ち返り整理しておきましょう。

まず、就業場所以外の送達をすべき場所で送達を受けるべき者に出会わないときは、従業者や同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができます。「渡しておいてください」といえるということです。

「書類の受領について相当のわきまえのあるもの」について、判例は、「送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することを期待することができる程度の能力を有する者をいうものと解されるから、7歳9箇月の女子は右能力を備える者とは認められない」としています(最判平4.9.10)。

次に、就業場所において送達を受けるべき者に出会わない場合は、従業者であって書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、書類を交付することができます。相当のわきまえは1項と同じですが、1項が就業場所以外の場所であるのに対して、2項は就業場所のため、「書類の交付を受けることを拒まないとき」という条件が加わります。訴訟上の書類など、中には巻き込まれたなくない人もいると考えると理解しやすいと思います。

送達を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができます。やるべきことはやったということです。

書留郵便等に付する送達

前条の規定により送達をすることができない場合には、裁判所書記官は、書類を書留郵便等に付して発送することができる(107条1項)。

書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす(107条3項)。

条文では、それぞれどこに送るか定められていますが、その部分は細かいので省略します。ここでは、送達をすることができない場合は、書留郵便等によって送達することができること、書類を書留郵便等によって発送した場合には、発送の時に、送達があったものとみなすことを押さえておきましょう。

公示送達の要件

次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる(110条1項)。

① 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
② 書留郵便等により送達をすることができない場合
③ 外国においてすべき送達について、外国における送達の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
④ 外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合

公示送達の方法

那覇地方裁判所

那覇地方裁判所の掲示板

公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする(111条)。

公示送達の効力発生の時期

公示送達は、掲示を始めた日から2週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、2回目以降の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる(112条1項)。

外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、6週間とする(112条2項)。

公示送達による意思表示の到達

訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合において、相手方に対する公示送達がされた書類に、その相手方に対しその訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載があるときは、その意思表示は、掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす(113条本文)。

送達をすべき場所が知れないときは、申立てにより、公示送達をすることができます。公示送達をすると、裁判所の掲示板へ公示送達の掲示がされます。そして、掲示を始めた日から2週間を経過すると、送達をした効力が生じます。2回目以降の公示送達は翌日、外国においてすべき送達の場合は6週間という例外まで押さえておきましょう。

上の画像は、那覇地方裁判所の掲示板です。多くの公示送達が掲示されています。

公示送達をして見るのかといえば、まず見ることはありません。しかし、裁判所としても送達の手続を無視して裁判を進めることはできないので、また、原告の裁判を受ける権利も保障する必要があるので、公示送達をすることによって、意思表示が相手方に到達したものとみなし、正しく裁判を進めることができるようになります。

参考:意思表示の公示送達 | 裁判所

第5節 裁判

既判力の範囲

確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する(114条1項)。

相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する(114条2項)。

民事訴訟法の山場のひとつ「既判力」です。既判力とは、確定判決に認められる拘束力のことをいいます。前訴の確定判決の主文が「被告は,原告に対し,100万円を支払え。」となっている場合、後訴において、被告は「100万円を支払う義務はない」ということを争うことができなくなります。

もし、後訴において、「そもそも100万円を支払う義務はない」などと言い出したら、訴訟を蒸し返すことになってしまい、法的安定が害されてしまいます。また、当事者は、前訴において争う機会を与えられていたため、裁判所の判断に拘束されても仕方ないとも考えられます。

判例は、「当事者が右売買契約の詐欺による取消権を行使することができたのにこれを行使しないで事実審の口頭弁論が終結され、右売買契約による所有権の移転を認める請求認容の判決があり同判決が確定したときは、もはやその後の訴訟において右取消権を行使して右売買契約により移転した所有権の存否を争うことは許されなくなる」としています(最判昭55.10.23)。

そして、確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有します。当事者間の争いは、主文、先ほどの例なら「100万円を支払うかどうか」の部分なので、その部分にだけ既判力を及ぼせば足りるからです。また、理由中にまで既判力を認めると、当事者にとって予測不能な範囲にまで既判力の効力が及び不意打ちとなるおそれがあります。そのため、主文にのみ既判力を認めることで、自由な訴訟ができるようになっています。

確定判決は、主文にのみ既判力を有し、理由中の判断には既判力を有さないのが原則でした。しかし、相殺については、理由中にも既判力が生じないと、紛争が蒸し返されるおそれがあります。

まず、前提として、相殺については理由中に書かれます。たとえば、主文は「被告は,原告に対し,100万円を支払え。」のように書かれます。そして、理由中に「相殺する旨の意思表示をした」「相殺によりその対当額が消滅した」のように相殺について書かれます。

もし、このとき、理由中に書かれている相殺について既判力が生じないと、あとで、被告が、相殺に使った自動債権を他の裁判に使えることになってしまいます。そこで、相殺については、理由中の判断であっても、相殺をもって対抗した額について既判力を有するとされています。

これまで、原則は主文のみ(1項)、相殺は理由中にも既判力が及ぶことについて見てきました(2項)。この他、信義則について、判例は、次のように述べています。

数量的一部請求を全部又は一部棄却する旨の判決は、このように債権の全部について行われた審理の結果に基づいて、当該債権が全く現存しないか又は一部として請求された額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものであって、言い換えれば、後に残部として請求し得る部分が存在しないとの判断を示すものにほかならない。したがって、右判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであり、前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。以上の点に照らすと、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないと解するのが相当である。

最判平10.6.12

たとえば、「300万円の金銭債権のうち、100万円について返してください」と訴えを提起したとします。そして、この全部または一部を棄却する判決(例:100万円の金銭債権はない、40万円の金銭債権はないなど)は、300万円の債権の全部について行われた審理の結果に基づいて、300万円の債権がまったく現存しないか、または一部として請求された100万円に満たない額(60万円など)しか現存しないとの判断を示すものであって、言い換えると、後に残部として請求し得る部分(200万円など)が存在しないとの判断を示すものにほかならない。

したがって、判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであるとしています。

以上の点に照らすと、金銭債権の数量的一部請求訴訟(300万円のうち100万円など)で敗訴した原告が残部請求(200万円など)の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されないと解するのが相当であるとしています。

大切なのは、既判力が及んでいるわけではないという点です。既判力は、あくまで主文のみ、そして、相殺のときは理由中に及ぶというものでした。この判例は、相殺ではないので、主文にのみ既判力が及びます。しかし、それでは残部請求の訴えを提起することができることになってしまい、妥当な結論とはいえないので、「特段の事情がない限り、信義則に反して許されない」としています。

確定判決等の効力が及ぶ者の範囲

確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する(115条1項)。

① 当事者
② 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
③ 前2号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
④ 前3号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者

先ほどは、主文や理由などどの範囲に既判力が及ぶかという客観的なものでした。今回は、誰に既判力が及ぶのかという主観的なものです。

1号は、当事者なので当然既判力が及びます。

2号は、他人のために原告または被告となった場合、たとえば債権者代位訴訟などがあたります。

3号は、口頭弁論終結後の承継人、たとえば、包括承継人の相続人や特定承継人の第三者などがわかりやすいと思います。承継人に既判力を及ぼさないと、物を第三者等に処分すればよいことになってしまい、これでは実効性がなくなってしまうため、承継人にも既判力が拡張されます。

4号は、これらの者のために請求の目的物を所持する者です。たとえば、「ある物を引き渡しなさい」と言われている物を持っている家族などが該当します。

中断及び中止の効果

判決の言渡しは、訴訟手続の中断中であっても、することができる(132条1項)。

訴訟手続の中断又は中止があったときは、期間は、進行を停止する。この場合においては、訴訟手続の受継の通知又はその続行の時から、新たに全期間の進行を始める(132条2項)。

定期金による賠償を命じた確定判決の変更を求める訴え

口頭弁論終結前に生じた損害につき定期金による賠償を命じた確定判決について、口頭弁論終結後に、後遺障害の程度、賃金水準その他の損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には、その判決の変更を求める訴えを提起することができる。ただし、その訴えの提起の日以後に支払期限が到来する定期金に係る部分に限る(117条1項)。

確定判決に抵触する部分については、原則として新たに訴えを提起することはできません。しかし、たとえば、後遺障害の程度など損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合は、それを訴える当事者の利益を保護する必要があります。そこで、そのような場合は、判決の変更を求める訴えを提起できるとされています。ただし、すでに支払期限が来ているものに関してはやはり不当な蒸し返しになってしまうおそれがあるために、できないようになっています。

決定及び命令の告知

決定及び命令は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる(119条)。

「判決は、言い渡しによってその効力を生ずる。」(250条)のに対して、裁判所がする決定と裁判官がする命令は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生じます。判決が、慎重なものであるのに対して、決定と命令は簡易迅速であることが求められるからです。

判決に関する規定の準用

決定及び命令には、その性質に反しない限り、判決に関する規定準用する(122条)。

第6節 訴訟手続の中断及び中止

訴訟手続の中断及び受継

次の各号に掲げる事由があるときは、訴訟手続は、中断する。この場合においては、それぞれ当該各号に定める者は、訴訟手続を受け継がなければならない(124条1項)。

① 当事者の死亡 相続人、相続財産の管理人、相続財産の清算人その他法令により訴訟を続行すべき者
② 当事者である法人の合併による消滅 合併によって設立された法人又は合併後存続する法人
③ 当事者の訴訟能力の喪失又は法定代理人の死亡若しくは代理権の消滅 法定代理人又は訴訟能力を有するに至った当事者
④ 省略
⑤ 一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものの死亡その他の事由による資格の喪失 同一の資格を有する者
⑥ 選定当事者の全員の死亡その他の事由による資格の喪失 選定者の全員又は新たな選定当事者

前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない(124条2項)。

第1項第1号に掲げる事由がある場合においても、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができない(124条3項)。

当事者の死亡などがあったとき、相続人などが訴訟に参加する手続を保障するために、訴訟は中断します。

ただし、訴訟代理人がいる間は、適用しません。

また、第1項1号に掲げる事由、当事者の死亡の場合は、相続人は、相続の放棄をすることができる間は、訴訟手続を受け継ぐことができません。たとえば、訴訟が、自分に都合の悪い方向に進んだ場合に相続放棄をするなどをすると、訴訟が不安定になってしまうからです。

相手方による受継の申立て

訴訟手続の受継の申立ては、相手方もすることができる(126条)。

職権による続行命令

当事者が訴訟手続の受継の申立てをしない場合においても、裁判所は、職権で、訴訟手続の続行を命ずることができる(129条)。

中断及び中止の効果

判決の言渡しは、訴訟手続の中断中であっても、することができる(132条1項)。

当事者の死亡などがあったときは、訴訟手続は中断します。これは、当事者が訴訟手続に参加するのを保障するためでした。しかし、口頭弁論が終わり、あとは判決の言い渡しだけの場合、訴訟手続の中断中であっても、することができます。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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