民事訴訟法の当事者について解説します。第3章の当事者では、当事者能力や訴訟能力などについて整理をしていきます。誰が民事訴訟を提起できるのかの部分です。
目次
第1節 当事者能力及び訴訟能力
原則
当事者能力等については、民法などに従います。
法人でない社団等の当事者能力
権利能力なき社団にも争いごとは起きるため、当事者能力があります。
選定当事者
共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる(30条1項)。
権利能力なき社団ではなくても、代表となる選定当事者を選ぶことができるということです。
訴訟の係属の後、前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定したときは、他の当事者は、当然に訴訟から脱退する(30条2項)。
未成年者及び成年被後見人の訴訟能力
未成年者と成年被後見人は、行為能力がないので、原則として、法定代理人によらなければ訴訟行為をすることはできません。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合、たとえば、営業を許可された未成年など(民法6条1項)は、訴訟行為をすることができます。
被保佐人、被補助人及び法定代理人の訴訟行為の特則
たとえば、被保佐人は、保佐人の同意がなければ訴訟行為をすることができません(民法13条4号)。しかし、相手方の提起した訴えについて訴訟行為をするには、保佐人の同意は必要になりません。これは、相手方の裁判を受ける権利を保障したものです。
被保佐人、被補助人又は後見人その他の法定代理人が次に掲げる訴訟行為をするには、特別の授権がなければならない(32条2項各号)。
①訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は脱退
②控訴、上告又は上告受理の申立ての取下げ
③異議の取下げ又はその取下げについての同意
法定代理人は、被保佐人や被補助人などを助けるのが役目なので、訴えの取下げや和解など、勝手に負けるようなことをしてはならないということです。これらの訴訟行為をするには、特別の授権が必要になります。
訴訟能力等を欠く場合の措置等
訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは、裁判所は、期間を定めて、その補正を命じなければならない。この場合において、遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができる(34条1項)。
訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠く者がした訴訟行為は、これらを有するに至った当事者又は法定代理人の追認により、行為の時にさかのぼってその効力を生ずる(34条2項)。
法定代理権の消滅の通知
第2節 共同訴訟
共同訴訟の要件
前段は、権利又は義務が数人について「共通」であるときです。たとえば、同一の事故による損害賠償請求を複数の加害者にする場合などがあります。後段は、権利又は義務が「同種」であるときです。たとえば、各賃借人に対して明渡請求などをする場合です。各賃借人はそれぞれ別個の賃貸借契約をしているので共通の権利義務があるわけではないですが、同種の権利義務があります。
共同訴訟人の地位
原則として、共同訴訟人の一人の訴訟行為は、他の共同訴訟人に影響を及ぼしません。これを「共同訴訟人独立の原則」といいます。しかし、それでは弊害もあるので、以下、必要的共同訴訟というものが定められています。
必要的共同訴訟
共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合、全員の利益においてのみ効力を生じます。反対にいうと、不利益になる部分は、効力は生じません。たとえば、共同訴訟人のひとりが不都合なことを認めるなどです。
相手方からすると、ひとりひとりに対して同じ訴訟行為をするのは大変なので、共同訴訟人の一人に対してする訴訟行為は、全員に対して効力を生じます。
第1項に規定する場合とは、全員について合一にのみ確定すべき場合です。この場合は、合一に確定する必要があるので、共同訴訟人の一人に訴訟手続の中断等があるときは、訴訟は中断します。
同時審判の申出がある共同訴訟
話が戻っていることに注意しましょう。ここは、「全員について合一にのみ確定すべき」ではありません。その場合でも、共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合、たとえば、訴訟1では、本人Aさんに対して、代理が成立していることを前提に履行を求める訴訟を起こしたとします。そして、訴訟2では、代理人Bさんに対して、無権代理の責任追及についての訴訟を起こしたとします。このふたつは法律上併存し得ない関係にあります。代理権があるかないかは併存し得ないからです。しかし、たとえば、訴訟1では代理権がないと判断され、訴訟2では代理権があると判断されてしまう可能性があります。
そのため、このような場合において、原告の申出があったときは、弁論と裁判は分離しないでしなければならないとされています。
第3節 訴訟参加
補助参加
共同訴訟は、訴訟の目的である権利義務が共通であるとき等にできるものでした。今回の補助参加は、権利義務が共通というほどではありません。訴訟の結果について利害関係を持っている程度です。たとえば、保証人が保証債務を請求されている場合、債務者は、保証人が敗訴した場合、保証人に求償されることになるので、補助参加することができます。
補助参加の申出
補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない(43条1項)。
補助参加についての異議等
当事者が補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で、裁判をする。この場合においては、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない(44条1項)。
補助参加は、当事者が異議を述べたときは、それについて裁判がされます。「異議を述べたとき」ということに注意しましょう。
補助参加人の訴訟行為
補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない(45条1項)。
補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない(45条2項)。
補助参加人は、補助参加について異議があった場合においても、補助参加を許さない裁判が確定するまでの間は、訴訟行為をすることができる(45条3項)。
補助参加人は、基本的になんでもできます。ただし、あくまで補助です。そのため、その裁判においてすでにできなくなっていることについては、できません。
独立当事者参加
訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる(47条1項)。
先ほどの補助参加人が補助的だったのに対して、独立当事者参加は、第三者が当事者と同じ立ち位置で訴訟に参加します。つまり、三角形のような関係で訴訟をするということです。AとBが「それは自分のものだ」と争っているときに、Cが「いやいや、それは自分のものだ」と入ってくるイメージです。
前項の規定による参加の申出は、書面でしなければならない(47条2項)。
前項の書面は、当事者双方に送達しなければならない(47条3項)。
独立当事者参加は、独立した存在なので、通常の訴訟のように書面でし、それを双方に送達しなければなりません。通常の訴訟のようにというのは、今後見ていきましょう。
訴訟脱退
独立当事者参加として第三者が入ってきたとき、参加前の原告または被告は、相手方の承諾を得て訴訟を脱退することができます。ただ、訴訟には参加していたので、脱退した当事者に対しても判決の効力を有します。判決の効力についても、後ほど見ていきましょう。
訴訟告知
たとえば、債権者代位訴訟などがありますが、参加することができる第三者に訴訟の告知をすることができます。
訴訟告知を受けた者は、争う機会を保障されたことになります。そのため、訴訟に参加しなかったときも、参加することができた時に参加したものとみなされます。つまり、裁判は、その第三者に対しても及ぶということです。
第4節 訴訟代理人及び補佐人
訴訟代理権の範囲
訴訟代理人は、次に掲げる事項については、特別の委任を受けなければならない(55条2項)。
① 反訴の提起
② 訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は脱退
③ 控訴、上告若しくは上告受理の申立て又はこれらの取下げ
④ 異議の取下げ又はその取下げについての同意
⑤ 代理人の選任
弁護士などの訴訟代理人は、その訴訟を勝たせるために行います。そのため、訴えを取下げたり、和解したりすることはできません。
個別代理
訴訟代理人が数人あるときは、各自当事者を代理する(56条1項)。
当事者が前項の規定と異なる定めをしても、その効力を生じない(56条2項)。
訴訟代理人は、各自が当事者を代理します。「この代理人はこの部分だけ代理権がある」などをすると訴訟が複雑化してしまうので、このような定めは、効力を生じません。
当事者による更正
訴訟代理人も間違うことはあるので、事実に関する陳述は、当事者が直ちに取り消し、更生することができるようになっています。