【行政手続法】申請に対する処分(審査基準)と不利益処分(処分基準)の共通点や違いを比較

行政手続法
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行政手続法の申請に対する処分(審査基準)と不利益処分(処分基準)について解説しています。



行政手続法の対象

行政手続法

第1条 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

行政手続法は、①処分、②行政指導、③届出、④命令等を定める手続を対象にしています。まずは、行政手続法がこの4つを対象にしているという大枠を捉えることが大切です。

このうち、処分とは「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」をいいます(行政手続法2条2項)。今回は、申請に対する処分と不利益処分の違いをテーマにしているので、「どういった行為に処分性があるのか」といった内容については触れていません。

また、この記事では、処分(申請に対する処分、不利益処分)について見ていくので、他の3つ(行政指導、届出、命令等を定める手続)については言及していません。

処分

処分

次に、処分は、①申請に対する処分②不利益処分の2つに分けられます。

①申請に対する処分

申請とは、「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの」をいいます(2条3号)。これに対する処分が「申請に対する処分」です。

たとえば、飲食店を開業しようと思って、食品営業許可を行政庁に申請をして、これに対して行政庁が諾否(承諾するかしないか)の応答をする行為が「申請に対する処分」にあたります。

このとき、気をつけたいのが、諾否の「否(承諾しない)」にあたる申請拒否処分でも、「申請に対する処分」であるということです(次の「不利益処分」で言及します)。

②不利益処分

不利益処分とは、「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、またはその権利を制限する処分」をいいます(2条4号)。ただし、「申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分」は除かれます。

先ほど、「食品営業許可を承認されないときは不利益処分にあたるのではないか?」と考えた方もいると思いますが、行政手続法では、「申請により求められた許認可等を拒否する処分は不利益処分にはあたらない」(つまり「申請に対する処分」になる)とされています(2条4号ロ)。

飲食店を営業していたのに(プラスの効果)、許認可が剥奪されたら(マイナスの効果)、不利益処分になるというのは理解しやすいと思います。一方、飲食店の営業をしようと思っていて(ゼロ)、やっぱり営業できなかった(ゼロ)というのは、マイナスではなくゼロのままと考えることができます。

【参考】申請に対する処分の「申請拒否処分」や「不利益処分」では、「理由の提示」について考える必要があります。理由の提示についてはこちらの記事をご覧ください。

審査基準と処分基準

審査基準と処分基準

ここまでで「申請に対する処分」と「不利益処分」の違いがわかりました。続いて、「審査基準」と「処分基準」の違いについて見ていきましょう。

審査基準

行政手続法 第2章 申請に対する処分において、「行政庁は、審査基準を定めるものとする」とされています(5条1項)。そして、審査基準とは、「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」のことをいいます(2条8号ロ)。

噛み砕いていうと、申請に対する処分で使うのが「審査基準」です。

処分基準

行政手続法 第3章 不利益処分において、「行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」とされています(12条1項)。そして、処分基準とは、「不利益処分をするかどうかまたはどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」とあります(2条8号ハ)。

こちらも噛み砕いていうと、不利益処分で使うのが「処分基準」です。

まとめると

処分には、「申請に対する処分」と「不利益処分」の2つがあり、申請に対する処分で使われるのが「審査基準」、不利益処分で使われるのが「処分基準」であるということです。

まずは、この包摂関係(上下関係)をしっかりと把握しておくことが大切です。くれぐれも、4つを並列で考えたり、交差してしまわないように気をつけましょう。

定めること

定めること

ここまで来たら、かんたんです。ただ、条文や表をひたすらを暗記しようとするのではなく、どうしてそうなっているのかという趣旨を理解すると、忘れにくく応用もしやすくなります。

審査基準:法的義務

申請に対する処分(審査基準)は、「行政庁は、審査基準を定めるものとする」とされています(5条1項)。たとえば、飲食店を開業しようと思ったとき、どのような要件をクリアすればいいかわからないと申請しようがないため、審査基準は法的義務とされています。

処分基準:努力義務

一方、不利益処分(処分基準)は、「行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」とされています(12条1項)。処分基準は、個別具体的判断が必要であらかじめ画一的基準を定めるのが難しいケースがあることから、努力義務とされています。

言ってみれば、処分基準は「この一線を越えたら処分する」という限界値です。言い換えると、「その線ギリギリまでだったら大丈夫」ということがわかると、悪用されかねないということです。そう考えると、処分基準を定めることが努力義務だということが理解しやすいと思います。

公にしておくこと

公にしておくこと

審査基準:法的義務

申請に対する処分(審査基準)は、「行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない」とされています(5条3項)。

処分基準:努力義務

不利益処分(処分基準)は、「行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない」とされています。(12条1項)。「公にしておくこと」と同じ12条1項に位置していることからもわかるように、先ほどと同じ理由から努力義務となっています。

判例は、「同法12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準は、単に行政庁の行政運営上の便宜のためにとどまらず、不利益処分に係る判断過程の公正さと透明性を確保し、その相手方の権利利益の保護に資するために定められ公にされるものというべきである」としています(最判平27.3.3)。

できる限り具体的なものにしておくこと

できる限り具体的なものにしておくこと

審査基準:法的義務

審査基準は、「行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない」とされています(5条2項)。これにより、行政庁が恣意的(気まま)な判断をすることが困難となり、申請者がどのようにすれば良いかがわかるようになります。

処分基準:法的義務

処分基準は、「行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない」とされています(12条2項)。処分基準を定めることと公にすることは努力義務ですが、処分基準を定めるに当たっては法的義務とされています。

まとめると

最後に、法的義務と努力義務、条文の構造をまとめておきます。審査基準(5条)と処分基準(12条)では、どちらも定められている項目は同じですが、条文の位置が異なっています。

審査基準 処分基準
定めること 法的義務
(5条1項)
努力義務
(12条1項)
公にしておくこと 法的義務
(5条3項)
努力義務
(12条1項)
できる限り具体的な〜 法的義務
(5条2項)
法的義務
(12条2項)
SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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