地方自治法における、国地方係争処理委員会と自治紛争処理委員についてまとめています。
地方公共団体の事務
自治事務と法定受託事務
地方公共団体の事務は、「自治事務」と「法定受託事務」の2つに分けられます。
- 自治事務
- 法定受託事務
自治事務は、法定受託事務以外のものをいいます(地方自治法2条8項)。ちょうど、「行政権が、全ての国家作用のうちから立法作用と司法作用を除いた残りのもの」というものに似ています。
法定受託事務は、国が本来果たすべきもので、都道府県・市町村・特別区(東京23区)に委託するもの(1号法定受託事務)と、都道府県が本来果たすべきもので、市町村・特別区に委託するもの(2号法定受託事務)に分けられます。
- 1号法定受託事務:国が本来やるもの
- 2号法定受託事務:都道府県が本来やるもの
1号は、本来オーナーの仕事だけれど、店長やアルバイトスタッフにお願いしているもの、2号は、本来店長の仕事だけれど、アルバイトにお願いしているものといった感じになります。
関与
憲法94条は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」としています。
しかし、お店のオーナーが見守っているからといって、店長が好き勝手やっていいわけではないのと同じように、国(または都道府県)が一定の関与することが認められています(245条1項)。
関与は8種類あります。
- 助言・勧告
- 資料の提出の要求
- 是正の要求
- 同意
- 許可・認可・承認
- 指示
- 代執行
- その他一定の行政目的を実現するための具体的個別的に関わる行為
係争処理制度
国や地方公共団体(都道府県・市町村)が対等の関係ということは、その紛争を処理する仕組みが必要になります。それが係争処理制度です。
係争処理制度は、「国地方係争処理委員会」と「自治紛争処理委員」の2つに分けられます。
- 国と地方公共団体→国地方係争処理委員会
- 都道府県と市町村→自治紛争処理委員
すごく噛み砕いていうと、オーナーが店長やアルバイトをいじめたときが前者、店長がアルバイトをいじめたときが後者になります(もちろん、まだいじめたかどうかは決まっていない状態です)。
最後は裁判所の出番です。もし、係争処理の審査結果や勧告に不服があるときは、「国の関与に関する訴え」「都道府県の関与に関する訴え」を高等裁判所に提起することができます(251条の5第1項、251条の6第1項)。
一方、関与を行う側からの視点も大切です。正しい「是正の要求」をしたにもかかわらず地方公共団体がそれに応じない場合は、「不作為の違法確認の訴え」を高等裁判所に提起することができます(第251条の7第1項、252条1項)。
ここまでで、地方自治の事務について整理できました。
国地方係争処理委員会と自治紛争処理委員の違いを比較
あとは、国地方係争処理委員会と自治紛争処理委員についておさえます。
国と地方公共団体の係争処理は、国地方係争処理委員会が行います。都道府県と市町村の係争処理は、自治紛争処理委員が行います。
規模が大きい国地方係争処理委員会は5人(両議院の同意を得て、総務大臣が任命)の委員によって組織される「委員会」、自治紛争処理委員は3人(事件ごとに、総務大臣または都道府県知事が任命)の「委員」であることに注意しましょう。また、自治紛争処理委員は事件ごとに任命されるので、事件が終了すると失職します(251条4項)。
審査の申出は、関与があった日から30日以内にします(250条の13第4項、251条の3第5項)。
国地方係争処理委員会(または自治紛争処理委員)は、審査の申出があった日から90日以内に、違法・不当がなければその旨、違法・不当があれば必要な措置を講ずべき旨の勧告等をします(250条の14、251条の3第5項)。
最後に、国地方係争処理委員会と自治紛争処理委員の違いについてまとめておきます。
国地方係争処理委員会 | 自治紛争処理委員 | |
関与する側 | 国 | 都道府県 |
人数 | 5人 | 3人 |
審査の申出 | 30日以内 | 30日以内 |
審査及び勧告 | 90日以内 | 90日以内 |