行政書士試験の択一式問題では、「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」(以下、基礎科目)から14題(問題47〜60)出題されます。基礎知識は、多くの方にとって対策がしにくい科目です。
ここで、直近の出題状況を確認してみましょう。なお、文章理解問題は除外しています。
(「基礎知識」は、令和5年度までは「一般知識等科目」と呼ばれていました)
令和5年度
- 問題47:政治(G7サミット)
- 問題48:政治(日本のテロ(テロリズム)対策)
- 問題49:経済(1960 年代以降の東南アジア)
- 問題50:経済(日本の法人課税)
- 問題51:経済(日本の金融政策)
- 問題52:社会(日本における平等と差別)
- 問題53:社会(日本の社会保障、社会福祉)
- 問題54:情報通信(日本における行政のデジタル化)
- 問題55:情報通信(情報通信用語)
- 問題56:情報通信(インターネット)
- 問題57:個人情報保護(個人情報)
令和5年度は、G7や行政のデジタル化などについて問われる問題が出題されました。
令和4年度
- 問題47:政治(ロシア・旧ソ連の外交・軍事)
- 問題48:経済(ヨーロッパの国際組織)
- 問題49:政治(軍備縮小(軍縮))
- 問題50:社会(郵便局)
- 問題51:経済(GDP)
- 問題52:社会(日本の森林・林業)
- 問題53:社会(アメリカ合衆国における平等と差別)
- 問題54:社会(地球環境問題)
- 問題55:情報通信(人工知能)
- 問題56:情報通信(情報通信に関する用語)
- 問題57:個人情報保護(個人情報保護制度)
令和4年度は、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻があったことから、ロシアについて出題されました。これは多くの方が検討しやすかったと思います。
令和3年度
- 問題47:政治(近代オリンピック大会と政治)
- 問題48:政治(日本における新型コロナウイルス感染症対策と政治)
- 問題49:政治(公的役職の任命)
- 問題50:社会(ふるさと納税)
- 問題51:経済(国際収支)
- 問題52:社会(エネルギー需給動向やエネルギー政策)
- 問題53:社会(先住民族)
- 問題54:社会(ジェンダーやセクシュアリティ)
- 問題55:情報通信(顔認識等)
- 問題56:情報通信(自動運転化の水準(レベル))
- 問題57:個人情報保護(国の行政機関の個人情報保護制度)
令和3年度は、コロナ禍ということもあり、「日本における新型コロナウイルス感染症対策と政治」について問われたのが特徴です。なお、この年は憲法でもワクチンを題材にした損害賠償や損失補償についての問題が出題されています。
令和2年度
- 問題47:政治(普通選挙)
- 問題48:政治(フランス人権宣言)
- 問題49:経済(日本のバブル経済とその崩壊)
- 問題50:経済(日本の国債制度とその運用)
- 問題51:社会(日本の子ども・子育て政策)
- 問題52:経済(新しい消費の形態)
- 問題53:社会(現在の日本における地域再生、地域活性化などの政策や事業)
- 問題54:社会(日本の人口動態)。
- 問題55:情報通信(インターネット通信で用いられる略称)。
- 問題56:個人情報保護(行政機関の保有する個人情報の保護)
- 問題57:個人情報保護(個人情報の保護に関する法律)
令和2年度は、比較的王道な問題が出題されました。「新しい消費の形態」では、この頃に浸透した用語である「ギグエコノミー」「シェアリングエコノミー」「サブスクリプション」などについて問われる問題が出題されています。どれも深く問われるものではありません。
令和元年度
- 問題47:政治(日中関係)
- 問題48:政治(女性の政治参加)
- 問題49:政治(国の行政改革の取組)
- 問題50:経済(日本の雇用・労働)
- 問題51:経済(経済用語)
- 問題52:政治(元号制定)
- 問題53:社会(日本の廃棄物処理)
- 問題54:情報通信(情報や通信)
- 問題55:情報通信(通信の秘密)
- 問題56:情報通信(放送または通信の手法)
- 問題57:個人情報保護(個人情報保護委員会)
令和元年度は、まさに「元号制定」について問われています。このように、その年や作問する前年度の象徴的なできごとについて問われることが多い点は、覚えておきたいところです。
傾向と対策
基礎知識は、「一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、情報通信・個人情報保護及び文章理解の中からそれぞれ出題」されます。令和6年度からは出題される内容が若干変更されるため、抵抗を感じる方がいるかもしれませんが、「行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令」といったように分野が限定されるため、対策はしやすくなったと思います。
なお、出題が14題なので、割り振りは令和5年度を基準に考えると、概ね次のような割合になると考えています(あくまで個人的な予想です)。
- 一般知識:6題
- 行政書士法等:2題
- 情報通信・個人情報保護:3題
- 文章理解:3題
一般知識(政治・経済・社会)から2題ずつ、行政書士法が1題、その他の法令から1題、情報通信と個人情報保護から3題、文章理解はこれまでと変わらず3題といった具合です。
一般知識
一般知識は、政治・経済・社会から出題されます。もっとも幅広い分野から出題されるので、まともに対策をするのは難しいところです。(作問の関係から)受験する年の4月あたりまでのできごとについて軽く押さえておくようにしましょう(近年だとサミット、ロシア、コロナなど)。
行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令
行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令は、新しく出題される分野です。近隣の資格試験の出題状況を考えると、おそらく行政書士法から1題は出題されると考えられます。行政書士法は、条文数が多くないので、基本書等で通読しておくようにしましょう。
情報通信・個人情報保護
情報通信・個人情報保護のうち、情報通信は、主にその年や前年あたりに認知されてきた用語を中心に問われる傾向があります。新しいものから、RPA、DX、テレワーク、自動運転化の水準(レベル3など)、シェアリングエコノミー、サブスクリプション、VR、5Gなどです。
一方、個人情報保護は、個人情報保護法等を押さえておくことで得点源にしやすい分野です。行政書士法とおなじように押さえておきたいところといえます。