【会社法】募集株式の発行等の決定機関についてのまとめ

商法・会社法
(※当サイトはアフィリエイトリンクを含みます)


会社法における募集株式の発行等の決定機関について整理します。募集株式の発行は,資金調達の手段のひとつです(他には新株予約権や社債があります)。どういうときにどういう決議が必要になるのかなど,丸暗記をすると大変なので,どうしてそうなるのかを押さえていきましょう。



募集株式の発行等

募集株式の発行等とは,株式引受人を募集することによって,新たに株式を発行することをいいます。「等」となっているのは,募集株式を「発行」するだけでなく,自己株式を「処分」する場合があるからです。この2つは手続きが共通しており,募集株式発行「等」となっています(199条1項)。

募集株式の発行等では,既存株主の不利益を考慮する必要があります。そして,それがそのまま決議要件につながっていきます。つまり,理由がわかれば丸暗記をしなくていいということです。

まず,株式会社には,「公開会社」と「非公開会社」があります。

  • 公開会社:すべての株式について譲渡制限の定めを設けていない会社
  • 非公開会社:公開会社ではない会社

※種類株式発行会社において,A株式は譲渡制限の定めを設けていて,B株式は譲渡制限の定めを設けている場合は,「すべての株式」ではないので,公開会社になります。

公開会社(ここではわかりやすく上場企業を想像してみましょう)は,不特定の人が株式を持っているので,持ち株比率を考慮する必要はありません。一方,非公開会社(仲間内で経営している会社を想像してみましょう)は,誰がどれだけ株式を持っているかが重要視されます。

次に,募集株式の発行等は,2つの方法があります。

  • 株主割当て:既存の株主に,持ち株数に応じて株式の割当を受ける権利を与えるもの
  • 株主割当て以外:株主割当て以外(公募,第三者割当)

※「公募」は不特定多数の者から申し込みを受けるもの,「第三者割当」は,特定の者に引き受けの権利を与えるものをいいます。

株主割当ては,持ち株数に応じて株式の割当を受ける権利が与えられるので,特定の誰かが特に有利な金額で払込むことはありませんが,株主割当て以外では払込み金額を考慮する必要があります。わかりやすくいうと,誰かが得をする場合はその理由を他の株主に伝える必要があります。

募集株式の発行等では,「公開会社」と「非公開会社」,「株主割当」と「株式割当て以外」の組み合わせを考えるのが肝になります。ここは「どっちだったかな…」と丸暗記をするのではなく,「なぜ,それを考慮する必要があるのか」を理解することが必要になります。

一度,まとめてみます。

株主割当以外 株主割当
公開会社
有利な価格考慮

非公開会社 持ち株比率考慮
有利な価格考慮
持ち株比率考慮

募集事項の決定機関

募集事項の決定機関

原則

募集事項の決定は,株主総会の特別決議で行わなければなりません(199条2項)。株式の発行という会社の決めごとなので,株主の意見を聞くのが原則ということです。

公開会社

ただ,公開会社の場合,持ち株比率を考慮する必要がないので,取締役会議で行うことができます(201条1項,199条2項)。

しかし,公開会社でも有利な価格は考慮する必要があるので,有利発行にあたる場合には,株主総会の特別決議で行わなければなりません(199条2項,201条1項,309条2項5号)。また,取締役は,その株主総会において,有利発行を必要とする理由を説明しなければなりません(200条2項)。

有利発行にあたる場合でも,株主総会の特別決議で募集株式の数の上限と下限の金額を定めれば,取締役会に委任することができます(200条1項,199条2項,201条1項,309条2項5号)。有利な価格は考慮する必要がありますが,株主総会で大枠が決まっているのなら,あとは取締役会に決めてもらっても大丈夫ということです。

非公開会社

非公開会社の株主割当て以外の場合,(原則は株主総会の特別決議ですが)株主総会の特別決議で募集株式の数の上限と下限の金額を定めれば,取締役会に委任することができます(200条1項,2項,309条2項5号)。公開会社の株主以外の割当と同じく,有利な価格は考慮する必要がありますが,株主総会で大枠が決まっているのなら,あとは取締役会に決めてもらっても大丈夫ということです。

また,非公開会社の株主割当ての場合,(原則は株主総会の特別決議ですが)出資をすれば持ち株比率は維持できるので,取締役の決定(取締役会においては取締役会決議)によることができる旨の定款の定めがあれば,取締役(取締役会)が決定することができます(202条3項1号,2号)。

まとめ

決議要件は,一度見ると覚えなければいけない量に驚いてしまいますが,基本は株主総会の特別決議,考慮する必要がなければ取締役会という考えると把握できます。

もう一度,考慮すべき事項の表を掲載します。

株主割当以外 株主割当
公開会社
有利な価格考慮

非公開会社 持ち株比率考慮
有利な価格考慮
持ち株比率考慮

次に,決議機関をまとめます。

株主割当以外 株主割当
公開会社 取締役会
→有利発行は株主総会
→取締役会に委任可能
取締役会
非公開会社 株主総会
→取締役等に委任可能
株主総会
→定款で取締役等

考慮すべき事項と決議機関がリンクしているのがわかります。

また,表の中で,非公開会社は「取締役等」となっているのに対し,公開会社では「取締役会」となっているところがあります。これは公開会社は「取締役会」を必ず置かなければならず,取締役による決定がありえないからです。

もう少し掘り下げると,公開会社は頻繁に株主が変動し,株主が業務執行を監視することができないため,会社の内部に取締役会の設置が義務づけられています。そして,さらに一歩掘り下げると,会社の内部に業務執行機関を置くと監督する機関が必要になるため(ざっくり言うと不正防止),公開会社の取締役会設置会社は監査役等が必要になります。

SOMEYA, M.

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

特集記事

SOMEYA, M.

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

TOP