【会社法】募集株式の発行等の割当て・払込み・現物出資についてのまとめ

商法・会社法
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会社法における募集株式の発行等の割当について整理します。募集事項の決定をしたら、次は「募集株式の通知・申込み・割当て」、「出資の履行」(金銭・現物出資)です。これで、株式会社はめでたく資金が調達されて、募集株式の引受人は株主になります。



募集株式の通知・申込み・割当て

募集株式の通知・申込み・割当て

通知

株式会社は、募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、株式会社の商号、募集事項、金銭の払込場所等の事項を通知しなければなりません(203条1項)。

申し込み

募集株式の引受けの申込みをする者は、氏名・住所、引受けようとする募集株式の数を記載したを書面を株式会社に交付しなければなりません(203条2項)。

割当て

株式会社は、申込者の中から募集株式の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければなりません(204条1項)。このとき、申込者に割り当てる募集株式の数を、「引受けようとする募集株式の数」(申し込んだ数)よりも減らすことができます。たとえば、1000株申し込んだ者に対して、700株を割当てることができるということです(会社の裁量がある)。

募集株式が譲渡制限株式である場合には、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては取締役会決議)によらなければなりません(204条2項本文、309条2項5号)。募集株式が譲渡制限株式であるということは、誰が株主であるかが重要ということです。そのため、誰に割当てるかを株主総会で決めることになっています。ただし、定款に別段の定めがある場合は、他の方法で決めることができます(204条2項但書)。

ここで、株式会社の割当てられた申込者は、株式引受人となります(206条1号)。

出資の履行

出資の履行

募集株式の引受人は、払込期日までまたは払込期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、払込金額の全額を払い込まなければなりません(208条1項)。募集株式の引受人は、出資の履行をしないときは、募集株式の株主となる権利を失います(208条5項)。

株主割当ての場合も、持ち株数に応じて株式の割当を受ける権利があるだけで、払込金額の全額の払込みがなければ、募集株式の株主となる権利は失います。

募集株式の引受人は、出資の履行をする債務(払込金額)と会社に対する債権(引受人が会社に貸している金銭など)とを相殺することができません(208条3項)。

募集株式の引受人は、払込期日を定めた場合は払込期日に、払込期間を定めた場合は払い込んだ日に募集株式の株主となります(209条1項)。

金銭以外の財産の出資(現物出資)

金銭以外の財産の出資(現物出資)

これまでは「金銭」による出資のお話でした。ここからは「金銭以外の財産の出資」いわゆる現物出資についてです。現物出資は、どのようなときに検査役の調査が不要になるかを押さえましょう。

現物出資をする場合、払込期日までまたは払込期間内に、払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければなりません(208条2項)。

株主になる日は、金銭出資の場合と同じです(209条1項)。

株式会社は、現物出資について事項を定めたときは、募集事項の決定の後遅滞なく、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければなりません(207条1項)。「1000万円分を現物で出資します」と言っても、その現物に500万円分の価値しかなければ、結局は有利発行をしたのと同じになってしまうからです。

検査役は、必要な調査を行い、調査の結果を裁判所に報告をしなければなりません(207条4項)。

裁判所は、現物出資財産について定められた価額を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければなりません(207条7項)。変更の決定をされた引受人は、決定の確定後1週間以内に限り、その募集株式の引受けを取り消すことができます(207条8項)。

次のそれぞれの場合には、検査役の調査が不要になります(207条9項各号)。

①募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合

②現物出資財産について定められた価額の総額が500万円を超えない場合

市場価格のある有価証券について定められた価額が市場価格を超えない場合

④現物出資財産について定められた価額が相当であることについて弁護士、公認会計士、税理士の証明(現物出資財産が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合

⑤株式会社に対する弁済期が到来している金銭債権の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合

①〜⑤のいずれかに該当していればいいので、たとえば、10分の1を超えていても500万円を超えていない、500万円を超えているけれど証明があるなどの場合は、検査役の調査は不要になります。

まとめ

試験対策として、会社設立時の現物出資(変態設立事項)は、②の500万円、③の市場価格のある有価証券、④弁護士等の証明がある場合に限られました。①は会社が設立される前なので「発行済株式」がなく、⑤も会社が設立されていないので会社に対する金銭債権がないからです。

また、募集株式は引受人が現物出資できるのに対して、会社設立時に現物出資できるのは発起人に限られる(募集設立における株式引受人は現物出資できない)のも注意が必要です。

かんたんにまとめておきます。

会社設立時 募集株式発行時
現物出資できる人 発起人 引受人
①10分の1
②500万円
③有価証券
④弁護士等の証明
⑤金銭債権

 

SOMEYA, M.

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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