【商法】総則について、商人、商業登記、商号、支配人などのまとめ

商法・会社法
(※当サイトはアフィリエイトリンクを含みます)


商法について解説します。商法・会社法は、行政書士試験で5題出題されます。学習範囲が広いという理由から最初から捨ててしまう方もいるようですが、学習範囲を絞れば、効率よく学習し得点源のひとつにすることが可能です。また、学習範囲が広いと感じる方は、商法や会社法の全体像を把握せず、ただ基本書を追っているだけの方も多いと思います。そこで、今回は、商法の構成を見て、試験対策上、どこを学習すればよいか確認するところからはじめましょう。



商法の全体像

商法は全3編で構成されています。

  • 第1編 総則
  • 第2編 商行為
  • 第3編 海商

このうち、行政書士試験で必要なのは、第1編の総則と第2編の商行為です。第3編の海商はまず問われないと思ってよいでしょう(当サイトでも省略します)。商法は、条文番号を見ると全850条ととても多く感じますが、32条から500条は削除されており(会社法に移行)、また、総則や商行為の中でも出題される部分は限られるので、実際に学習する量は思ったより少ないと感じるはずです。

ただ、条文を見ても、第1編と第2編に分かれているため、商法を勉強するときは、総則、商行為を分けて学習するようにしましょう。おそらく、ほとんどの方は1題しか出題されないことから、「商法」という括りで曖昧な学習をしていると思います。商法は3編でできていること、そのうち、総則、商行為を学習することを整理するだけで優位になるので、ぜひ今後もこの視点を持っていきましょう。

総則

第1編「総則」は、全7章で構成されています。

  • 第1章 通則
  • 第2章 商人
  • 第3章 商業登記
  • 第4章 商号
  • 第5章 商業帳簿
  • 第6章 商業使用人
  • 第7章 代理商

総則は、商法全体について定めている部分です。ここから試験対策として重要な条文について見ていきましょう。

第1章 通則

趣旨等

商人の営業商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる(1条1項)。

商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる(1条2項)。

商人の営業や商行為等については、商法が一般法となります。そして、商法に定めがない事項については、商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによります。

商法→商慣習→民法

私人間については、民法が一般法になります。しかし、商行為をするときは、迅速性などを考慮して「こうした方がいい」という場面も出てきます。そこで、商人の営業や商行為等については、民法に対して商法を特別法として定めています。

ここで、一般法と特別法は、比較するものによって異なる点に注意しましょう。民法は常に「一般法」ですが、商法は、民法に対しては特別法になり、保険法などに対しては一般法になります。

一方的商行為

当事者の一方のために商行為となる行為については、この法律をその双方に適用する(3条1項)。

当事者の一方が二人以上ある場合において、その一人のために商行為となる行為については、この法律をその全員に適用する(3条2項)。

難しく感じますが、当事者の一方(Aさん)のために商行為となる行為、たとえばお店でものを販売するなどの行為については、商法が双方(AさんとBさん)に適用されます。

また、当事者の一方が2人以上(Aさん、Bさん、Cさん)ある場合において、その一人(Aさん)のために商行為となる行為については、商法が全員(Aさん、Bさん、Cさん、Dさん)に適用されます。

第2章 商人

定義

この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう(4条1項)。

店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす(4条2項)。

ここで、商人について定義されました。商行為については、第2編で見ていきましょう。おそらく、多くの基本書は、この時点で501条や502条の商行為について列挙し、それだけでお腹いっぱいになってしまいます。まずは、総則では全体像を把握することに努め、各論点はそのとき学習しましょう。

4条2項については、現時点では抽象的にしか理解できませんが、お店でものを販売する者などは、商行為をしていなくても、商人とみなされます。

第3章 商業登記

通則

この編の規定により登記すべき事項は、当事者の申請により、商業登記法の定めるところに従い、商業登記簿にこれを登記する(8条)。

当事者は、商号などを法務局に登記をすることができます。登記は本人が申請することもできますし、代理人にお願いすることもできます。この業務を行っているのが登記の専門家である司法書士です。

登記の効力

この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする(9条1項)。

故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない(9条2項)。

登記の効力については、商法と会社法(908条)で同じことが定められています。

まず、登記すべき事項は、登記の後でなければ、善意の第三者に対抗することができません。つまり、登記をしなければ対抗できないということです。ただ、登記の後であっても、第三者が正当な事由によって登記があることを知らなかったときも対抗することができません。

正当な事由」について、あいまいに感じる方のために解説すると、災害による交通の途絶や登記簿の滅失汚損などの客観的な事由に限定するか客観的事情以外の要素も「正当な事由」にあたるかは学説によって異なるため、試験では問われないと思って問題ありません。なお、現在は、インターネットで登記簿が見られるので、「登記簿の滅失汚損」などの事由はなくなると考えられています(最判昭52.12.23)。

参考:舩津浩司「商法9条1項(会社法908条1項)と正当な事由」『商法判例百選』

第4章 商号

商号の選定

商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる(11条1項)。

商人は、その商号の登記をすることができる(11条2項)。

商人は、名前や名称などを商号とすることができ、商号を登記することができます。

商号の譲渡

商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる(15条1項)。

前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない(15条2項)。

商号は、営業とともにする場合、または営業を廃止する場合に譲渡することができます。「営業とともにする場合」という表現がややこしいですが、「染谷水産」という商号は、自身が行っている水産業の営業とともに譲渡することができるということです。反対にいうと、自分では営業をしながら、商号だけ譲ることはできないということです。トラブルになるのが目に見えています。

商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することはできません。第三者は登記簿を見て、「この人となら取引してもよい」と考えるため、登記をしていないなら、商号の譲渡人が今まで通り責任を負うことになります。条文だと難しく感じますが、具体例を考えると理解しやすいと思います。

第5章 商業帳簿

※省略

第6章 商業使用人

支配人

商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる(20条)。

第6章は、「商業使用人」となっていますが、試験対策上、商業使用人のうち、支配人についておさえておきましょう。また、出題傾向としては、それほどある部分ではないので、一読して理解できれば問題ありません。商人は、支配人を選任し、その営業所において、営業を行わせることができます。

支配人の代理権

支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する(21条1項)。

支配人は、他の使用人選任し、又は解任することができる(21条2項)。

支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(21条3項)。

支配人の代理権について定められています。これをみると、飲食店の全国チェーンの店長さんよりは、もう少し権限があるように感じると思います。会社の支店長などが近いと思います。

3項について、「この支配人はこの業務はすることができない」といった制限は、善意の第三者に対抗することはできません。悪意の第三者は知っていて保護する必要はないので、対抗することはできます。

支配人の登記

商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする(22条)。

支配人の競業の禁止

支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない(23条1項)。
①自ら営業を行うこと。
②自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。
③他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。
④会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。支配人が前項の規定に違反して同項第2号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額推定する(23条2項)。

支配人は、競業等が禁止されています。また、競業の禁止については、会社法にも出てくるのでおさえておきましょう。2号に掲げる行為、つまり「その商人の営業の部類に属する取引」をしたときは、その行為によって支配人等が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定されます。本来なら商人が得られたであろう利益が支配人等に流れてしまったということです。そして、ここから先は、一般的に、この推定された「損害の額」の支払を求めて損害賠償請求をすることになります。

表見支配人

商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない(24条)。

支配人でないにもかかわらず、営業の主任者であることを示す名称を付した使用人のことを表見支配人といいます。表見支配人は、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなされます。取引をした相手方を保護するためです。もっとも、相手方が悪意であったときは、相手方を保護する必要はないので、この限りでない、つまり権限を有するものとみなされません。

ここで、支配人が「一切の裁判上」となっているのに対して、表見支配人が「一切の裁判外」となっており、裁判について除かれていることがわかります。裁判に関しては、訴訟の安定性の観点から、訴訟能力等を欠くときは、裁判ができないように定められているからです。もっとも、これは民事訴訟法で定められていることで、行政書士試験の範囲外なので、詳細を理解する必要はありません。

第7章 代理商

※省略

まとめ

商法の総則について見てきました。

  • 行政書士試験において、商法は、総則商行為を学習する
  • 商法は、商人の営業や商行為の一般法である
  • 総則は、商法全体について定めている

次は、第2編「商行為」です。

SOMEYA, M.

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

特集記事

SOMEYA, M.

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

TOP
CLOSE