行政書士試験は、合格点と基準点があり、問題形式も択一式と記述式があります。また、出題科目の視点から見ても法令科目と一般知識等科目があり、合格するためには戦略が求められます。
そこで、ここで行政書士試験の得点戦略について書いてみたいと思います。
目次
合格点を知る
まず、合格点について。これは多くの方が知っているように、行政書士試験は300点中、180点をとる必要があります。大切なのは、これをどう分配して狙っていくかです。
合格基準点(脚切り点)を知る
次に、合格基準点について。いわゆる脚切り点です。行政書士試験は、法令等科目と一般知識等科目でそれぞれ合格基準点があります。
- 法令等科目:122点以上(正答率50%)
- 一般知識等科目:24点以上(正答率40%)
これらの合格基準点をクリアし、かつ180点(正答率60%)を超える必要があります。
また、択一式と多肢選択式の合計点が120点未満の場合、記述式(60点満点)の採点はされません。
と、ここまでは受験を考えている方なら知っていることも多いと思います。
択一式(多肢選択式含む)と記述式に分ける
ここから、具体的に戦略を考えてみましょう。
まずは、択一式(多肢選択式含む、以下同じ)と記述式に分けて考えてみましょう。択一式と記述式は以下のような配点割合になっています。
- 択一式:240点
- 記述式:60点
プランA:択一式180点
気持ちがラク(?)なのは、択一式で180点をとる方法です。記述式は行政法と民法から出題されることはわかっていても、その採点方法はブラックボックスで、その年の平均点によって配点が決められるという噂があるくらいだからです(あくまでウワサです)。とは言うものの、毎年の合格者をある程度一定にするための調整は必要だとは思うので、一概に否定はできません。
そこで、それらの不安定要素を排除するために、択一式で180点をとると、記述式のある意味”運”要素を排除することができ、記述式の点数をまるまるバッファとすることができます。
一方、180点をとるのはデメリットもあります。それは読みながらうすうす感じている方もいると思いますが、択一式に割り振られている240点から180点をとるということは、正答率が75%以上必要であることを意味します。しかも、これは予想しにくい一般知識等科目も含めてです。
結局のところ、記述式の運要素、一般知識等科目の運要素、そのどちらかを排除して、どちらかを受け入れることになるため、意外とリスクが高いともいえます。
オススメな人:記述式に苦手意識を持っている方
プランA:択一式160点+記述式20点
次は、択一式で160点をとる方法です。ここに記述式で20点を上乗せすれば合格点に達します。これだと、択一式は66.7%の正答率で良いことになるのでかなり負担が減るはずです。もっとも、一般知識等科目が読みにくいのを考慮して、法令等科目はできれば70〜80%を狙いたいところです。
また、記述式で20点をとればいいというのは、気持ちの面でもプレッシャーが少なくなります。60点のうち20点ということは、全体の3分の1ができればいいということです。私自身も、記述式は、半分くらいの点数がとれればいいやくらいの気持ちで部分点をとるつもりで臨みました。
オススメな人:バランスよく得点を狙いたい方
プランC:択一式140点+記述式40点
最後は、択一式で140点をとる方法です。240点のうち140点をとるということは、正答率58.4%ということになります。かなり精神的な負担が下がります。特に問題が予想しにくい一般知識等科目はどれだけ点数がとれるか未知数という方もいると思うので、そういう方には選びやすい戦略です。
ただし、その負担がのしかかるのが記述式です。択一式で必要な点数を下げた分、記述式では40点をとることが必要になります。これは全体の3分の2の得点をとる必要があるということです。記述式もどの分野が出題されるか読みにくいので(特に民法)、これは運要素が高いといえるでしょう。
また、記述式で40点が狙えるくらいまんべんなく(行政法と民法で穴なく)学習している方は、択一式で140点になるというのはおそらくありません。
ということを考慮すると、プランCはあまり現実的ではないといえるでしょう。
オススメな人:記述式が得意な方
法令等科目と一般知識等科目に分ける
次は、法令等科目と一般知識等科目の得点比率です。
仮に択一式で160点をとることを目標にしたからといっても、それを80点ずつに割り振ることはできません。法令等科目と一般知識等では配点比率が異なるからです。
- 法令等科目:184点(択一式40問、多肢選択式3問)
- 一般知識等科目:56点(14問)
法令等科目は、160点分が択一式、24点が多肢選択式に割り振られています。
ここから160点というのを考えると、より具体的に見えてくるのではないでしょうか。なお、一般知識等科目は最低でも24点(6問)をとる必要があります。
ここでは、次のように得点を割り振ってみました。
- 法令等科目:128点(択一式30問、多肢選択式1問分)
- 一般知識等科目:32点(8問)
法令等科目は128点、このうち択一式は30問(75%)に設定しました。多肢選択式は1問分(8点)正解すればよい設定にしました。一般知識等科目は余裕を見て8問合格の設定です。
科目の中で苦手分野を探す
法令等科目と一般知識等科目の得点比率を決めたら、もう一歩踏み込んで、各科目ごとの得点比率を考えて、それを達成するための課題(苦手分野)を探してみましょう。
- 法令等科目:基礎法学、憲法、行政法、民法、商法・会社法
- 一般知識等科目:政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解
このうち、行政法と民法は得点比率が高いので(記述式もある!)、苦手科目にならないように穴をつぶしておく必要があります。科目の中でどの分野が苦手なのかを把握し(行政事件訴訟法など)、それらをひとつひとつつぶしていきます(基本書に戻って学習するのをおすすめします)。
また、文章理解は最初はとっつきにくく感じますが、解法を身につければ、一般知識等科目の中でもっとも安定した得点源になるので、過去問等や講座を活用して正解できるようにしましょう。
まとめ
行政書士試験における得点戦略について見てきました。「○点とればいい」とわかっていても、そのままでは抽象的すぎて戦略がぼやけてしまいます。択一式と記述式、法令等科目と一般知識等、科目の中の苦手分野などまで落とし込んで、180点を目指していきましょう。