【不動産登記法】登記手続の総則について、登記識別情報、事前通知等についてのまとめ

不動産登記法

不動産登記法の登記手続から総則について学習します。いよいよ登記手続がはじまります。登記手続は、全3節で構成されています。今回は、全体について定める総則を見ていきましょう。

不動産登記法>登記手続>総則

当事者の申請又は嘱託による登記

登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、することができない(16条1項)。

登記は、原則、当事者の申請、官庁・公署の嘱託がなければすることができません。

代理権の不消滅

登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない(17条)。

① 本人の死亡
② 本人である法人の合併による消滅
③ 本人である受託者の信託に関する任務の終了
④ 法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更

民法では、本人の死亡等により代理権が消滅しますが、登記の申請をする者の委任による代理人の権原は、本人の死亡等では消滅しません。

申請の方法

登記の申請は、次に掲げる方法のいずれかにより、不動産を識別するために必要な事項申請人の氏名又は名称登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)を登記所に提供してしなければならない(18条)。

① 法務省令で定めるところにより電子情報処理組織(登記所の使用に係る電子計算機と申請人又はその代理人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法
② 申請情報を記載した書面(法務省令で定めるところにより申請情報の全部又は一部を記録した磁気ディスクを含む。)を提出する方法

登記の申請は、電子情報処理組織を使用する方法、書面を提出する方法により行います。政令で定める申請情報については、今の段階だと暗記になってしまうため、各申請のところでひとつずつおさえていきましょう。

登記識別情報の通知

登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない(21条)。

登記識別情報の通知の相手方について、規則を見ておきましょう。

次の各号に掲げる場合における登記識別情報の通知は、当該各号に定める者に対してするものとする(規則62条1項)。
① 法定代理人(支配人その他の法令の規定により当該通知を受けるべき者を代理することができる者を含む。)によって申請している場合 当該法定代理人
② 申請人が法人である場合(前号に規定する場合を除く。) 当該法人の代表者

登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受けた代理人がある場合には、登記識別情報の通知は、当該代理人に対してするものとする(規則62条2項)。

2項について、代理人が登記識別情報の通知を受ける場合には、登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受ける必要があります。

登記識別情報の通知は、法務大臣が別に定める場合を除き、次の各号に掲げる申請の区分に応じ、当該各号に定める方法によるものとする(規則63条1項)。

① 電子申請 法務大臣の定めるところにより、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された登記識別情報を電子情報処理組織を使用して送信し、これを申請人又はその代理人の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
② 書面申請 登記識別情報を記載した書面を交付する方法

登記識別情報の通知は、電子申請と書面申請の場合によって異なります。

「登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合」について、どのような場合かおさえておきましょう。

法第21条ただし書の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする(規則64条1項)。

① 登記識別情報の通知を受けるべき者があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合(官庁又は公署が登記権利者のために登記の嘱託をした場合において、当該官庁又は公署が当該登記権利者の申出に基づいて登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をしたときを含む。)

② 登記識別情報の通知を受けるべき者が、登記官の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに登記識別情報が記録され、電子情報処理組織を使用して送信することが可能になった時から30日以内に自己の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該登記識別情報を記録しない場合

③ 登記識別情報の通知を受けるべき者が、登記完了の時から3月以内に登記識別情報を記載した書面を受領しない場合

④ 登記識別情報の通知を受けるべき者が官庁又は公署である場合(当該官庁又は公署があらかじめ登記識別情報の通知を希望する旨の申出をした場合を除く。)

電子情報処理組織の場合は30日、書面の場合は3月となります。4項について、登記識別情報の通知を受けるべき者が官庁または公署である場合、原則として登記識別情報は通知されません。

登記識別情報の提供

登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第1項、第2項及び第4項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、前条ただし書の規定により登記識別情報が通知されなかった場合その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない(22条)。

共同申請をする場合、登記義務者の登記識別情報を提供します。

事前通知等

登記官は、申請人が前条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間[2週間]内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない(23条1項、規則70条8項)。

登記官は、前項の登記の申請が所有権に関するものである場合において、同項の登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、法務省令で定める場合を除き、同項の申請に基づいて登記をする前に、法務省令で定める方法により、同項の規定による通知のほか、当該登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて、当該申請があった旨を通知しなければならない(23条2項)。

前2項の規定は、登記官が第25条(第10号を除く。)の規定により申請を却下すべき場合には、適用しない(23条3項)。

第1項の規定は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない(23条4項)。

① 当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第1項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつその内容を相当と認めるとき。
② 当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人から当該申請人が第1項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ登記官がその内容を相当と認めるとき。

事前通知について、整理しましょう。登記官は、申請人が共同申請をする場合において、登記識別情報を提供することができないときは、事前通知をします。

また、この申請が所有権に関するものである場合において、登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、事前通知のほか、前住所通知をします。

2項の「法務省令で定める場合を除き」について、確認しましょう。

法第23条第2項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする(規則71条2項)。

① 登記義務者の住所についての変更の登記の登記原因が、行政区画若しくはその名称又は字若しくはその名称についての変更又は錯誤若しくは遺漏である場合
② 登記の申請の日が、同項の登記義務者の住所についてされた最後の変更の登記の申請に係る受付の日から3月を経過している場合
③ 登記義務者が法人である場合
④ 前3号に掲げる場合のほか、次条第1項に規定する本人確認情報の提供があった場合において、当該本人確認情報の内容により申請人が登記義務者であることが確実であると認められる場合

これらの場合は、前住所通知はされません。

事前通知と前住所通知は、申請を却下すべき場合には行いません。カッコ書きとして、「(第10号を除く。)」となっているのは、25条10号は、事前通知で定められた期間内に申出がないときは却下することについて定めており、10号は、事前通知をしたことが前提になっているからです。

事前通知は、①申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人、つまり司法書士によってされた場合であって、登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき、②公証人から必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるときは、されません。

資格者代理人による本人確認情報の提供について、確認しておきましょう。

登記官が資格者代理人から提供を受ける申請人が申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために必要な情報(以下「本人確認情報」という。)は、次に掲げる事項を明らかにするものでなければならない(規則72条1項)。

① 資格者代理人が申請人と面談した日時、場所及びその状況

② 資格者代理人が申請人の氏名を知り、かつ、当該申請人と面識があるときは、当該申請人の氏名を知り、かつ、当該申請人と面識がある旨及びその面識が生じた経緯

③ 資格者代理人が申請人の氏名を知らず、又は当該申請人と面識がないときは、申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために当該申請人から提示を受けた次項各号に掲げる書類の内容及び当該申請人が申請の権限を有する登記名義人であると認めた理由

前項第3号に規定する場合において、資格者代理人が申請人について確認をするときは、次に掲げる方法のいずれかにより行うものとする。ただし、第1号及び第2号に掲げる書類及び有効期間又は有効期限のある第3号に掲げる書類にあっては、資格者代理人が提示を受ける日において有効なものに限る(規則72条2項)。

① 運転免許証、個人番号カード、旅券等、在留カード、特別永住者証明書又は運転経歴証明書のうちいずれか1以上の提示を求める方法

② 国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合若しくは私立学校教職員共済制度の資格確認書、介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、基礎年金番号通知書、児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳又は戦傷病者手帳であって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか2以上の提示を求める方法

③ 前号に掲げる書類のうちいずれか1以上及び官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに準ずるものであって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもののうちいずれか1以上の提示を求める方法

資格者代理人が本人確認情報を提供するときは、当該資格者代理人が登記の申請の代理を業とすることができる者であることを証する情報を併せて提供しなければならない(規則72条3項)。

1項3号の書類について、2項1号の運転免許証、個人番号カード、旅券等は1以上で足ります。2項2号の国民健康保険、健康保険などは、少し証明力が落ちるので2以上になります。2項3号は、2号のいずれか1以上と3号のいずれか1以上の組み合わせです。

組み合わせをまとめると、以下の通りです。

  • 1号
  • 2号+2号
  • 2号+3号

3号+3号は認められないという点に注意しましょう。

登記官による本人確認

登記官は、登記の申請があった場合において、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、次条の規定により当該申請を却下すべき場合を除き、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない(24条1項)。

登記官は、前項に規定する申請人又はその代表者若しくは代理人が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に同項の調査を嘱託することができる(24条2項)。

申請の却下

登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、登記の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない(25条1項)。

① 申請に係る不動産の所在地が当該申請を受けた登記所の管轄に属しないとき。
② 申請が登記事項以外の事項の登記を目的とするとき。
③ 申請に係る登記が既に登記されているとき。
④ 申請の権限を有しない者の申請によるとき。
⑤ 申請情報又はその提供の方法がこの法律に基づく命令又はその他の法令の規定により定められた方式に適合しないとき。
⑥ 申請情報の内容である不動産又は登記の目的である権利が登記記録と合致しないとき。
⑦ 申請情報の内容である登記義務者の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。
⑧ 申請情報の内容が登記原因を証する情報の内容と合致しないとき。
⑨ この法律に基づく命令若しくはその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならないものとされている情報が提供されないとき。
⑩ 第23条第1項に規定する期間内に同項の申出がないとき。
⑪ 表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が登記官の調査の結果と合致しないとき。
⑫ 登録免許税を納付しないとき。
⑬ 前各号に掲げる場合のほか、登記すべきものでないときとして政令で定めるとき。

参考:不動産登記申請手続:法務局

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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