民事執行法の債務者の財産状況の調査について解説します。これは、権利実現の実効性を確保する見地から、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続です。本試験対策の点からすると、多く問われる部分ではないので、制度の概要や手続の大まかな流れについて押さえておきましょう。
目次
第1節 財産開示手続
管轄
参考:財産開示手続 | 裁判所
実施決定
執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない(197条1項)。
①強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったとき。
②知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき。
期日指定及び期日の呼出し
執行裁判所は、財産開示手続の決定が確定したときは、財産開示期日を指定しなければならない(198条1項)。
財産開示期日には、次に掲げる者を呼び出さなければならない(198条2項)。
①申立人
②債務者
財産開示期日
開示義務者(前条第2項第2号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産について陳述しなければならない(199条1項)。
執行裁判所は、財産開示期日において、開示義務者に対し質問を発することができる(199条3項)。
申立人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる(199条4項)。
財産開示期日における手続は、公開しない(199条6項)。
財産開示事件に関する情報の目的外利用の制限
第2節 第三者からの情報取得手続
管轄
先ほどは、債務者に対して財産開示手続をして、財産開示期日において、開示義務者(債務者)は財産について陳述をするしなければなりませんでした。第2節の第三者からの情報取得手続では、同じように申立人が完全な弁済を得ることができなかったり、弁済を得られないことの疎明があったときは、債務者の不動産(205条)、給与債権(206条)、預貯金債権等(207条)に係る情報の取得ができるようになっています。本試験対策として、このような制度があるという点を押さえておきましょう。
情報の提供の方法等
情報の取得の申立てを認容する決定により命じられた情報の提供は、執行裁判所に対し、書面でしなければならない(208条1項)。
前項の情報の提供がされたときは、執行裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、申立人に同項の書面の写しを送付し、かつ、債務者に対し、同項に規定する決定に基づいてその財産に関する情報の提供がされた旨を通知しなければならない(208条2項)。
情報の提供は、執行裁判所に対し、書面でされます。執行裁判所は、申立人に書面の写しを送付し、債務者には、財産に関する情報の提供がされた旨を通知します。