【令和5年度】行政書士試験の記述式問題(行政法・民法)の解き方

行政書士
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記述式問題の解法や必要な知識について、令和5年度の記述式問題を題材にして学習します。

記述式問題は、問題44〜46で出題されます。また、問題41〜43は多肢選択式が出題されます。どちらも解くのに時間がかかることから、1周目は飛ばすのをおすすめします。

1周目にそれほど考える時間を要しない問題を問いたら、2周目に先ほど飛ばした問題を解きます。多肢選択式や記述式は、このとき以降に解くようにしましょう。人によっては、2周目も択一式問題だけにしたいという方もいらっしゃると思います。そういう方は、記述式等は3周目から着手しても問題ありません。いずれにせよ、本試験ではどのような順番で問題を解いていくかは考えておきましょう。



問題44 行政法

令和5年度行政書士試験 問題44

令和5年度行政書士試験 問題44

問題44は、行政法からの出題です。記述式問題を解くときは、問題文を頭から読むのではなく、何が問われているのか設問を読むのをおすすめします。ここでは、「誰に対してどのような手段をとることが有効適切か」となっています。もう少し前から読んで「次の会期の議会が招集されるまで1か月程度の短い期間しかないことを考慮に入れたとき」という条件をみるのもよいでしょう。

これで、この問題は、①誰に対して、②どのような手段をとるか、そして、③次の会期の議会が招集されるまで1か月程度の短い期間しかない、つまり緊急性があることを考慮して答えることがわかりました。例年、記述式は1つの問題に対して、3つほどの内容を40字程度で答える形式になっています。

ここまで把握したうえで、問題文を頭から読んでいきましょう。

参照条文にあげられている地方自治法134条1項をみると、「普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。」と規定しています。また、135条1項各号において、懲罰として戒告、陳謝、出席停止、除名の4つが定められています。そして、本問では、Y市議会会議規則α条において「議員は、議会の品位を重んじなければならない」と規定しています。議員であるXは、Y市議会会議規則α条に違反したため、地方自治法によって出席停止の懲罰に科すことが決定され、本会議によって正式に決定されそうになっています。

問題の大枠としては、Xの出席停止の懲罰を回避するための手段を答えるものになっています。

「(仮の救済手段も含め、行政事件訴訟法に定められているものに限る。)」という文言がヒントになっているので、活用しましょう。「仮の救済手段」とあるので、これが「緊急性」と関連しているのではないかと予想することができます。そして、行政事件訴訟法から選ぶということもわかりました。

このことから、行政事件訴訟法の体系を理解しておくだけでなく、必要に応じて頭の中から引っ張り出せるようにしておくことが必要であることがわかります。過去問は、本試験においてどのくらいのレベルが求められるかを知る最良のツールです。過去問演習を通じて、自分に足りない知識を確認し、知識の穴を埋めるようにインプットをしていきましょう。

①誰に対して

まず、①誰に対しての部分を考えてみましょう。行政法の記述式において、「誰に対して」を問うものは頻出です。行政事件訴訟法の「被告適格等」は、11条で取消訴訟について規定されています。そして、38条で「取消訴訟に関する規定の準用」として11条が準用されています。

「第11条から第13条まで、第16条から第19条まで、第21条から第23条まで、第24条、第33条及び第35条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。」(38条1項)

準用は、条文番号を覚える必要はありませんが、何が準用されるのか、何が準用されないのかをおさえることが必要になります。そして、なぜ準用するのかまたは準用しないのかという理由付けまですると、丸暗記ではない学習ができるようになります。

それでは、被告適格について見てみましょう。

処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない(11条1項)。

① 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
② 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体

処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない(11条2項)。

前2項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない(11条3項)。

本問では、「処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属する場合」にあたるので、「Y市」が被告となります。回答としては、「Y市に対して」と記述することになります。

なお、本問では1項のみを使いましたが、これでは知識が点になってしまいます。別の角度から問われたときに対応できるようにするため、「国又は公共団体に所属しない場合」(2項)、「被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合」(3項)といったことについても確認しておきましょう。このようにすると、大昔の過去問や予想問題に手を広げて、知識を点で埋める必要がなくなります。

②どのような手段をとるか

行政事件訴訟」は、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟があります(2条)。このうち、今回は、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟である「抗告訴訟」を選びます(3条1項)。

抗告訴訟には、取消しの訴え、無効等確認の訴え、不作為の違法確認の訴え、義務付けの訴え、差止めの訴えがありました。今回は、「出席停止の懲罰を回避するための手段」、つまり、行政庁が一定の処分をすべきでないにもかかわらずこれがされようとしている場合に、行政庁がその処分をしてはならない旨を命ずることを求めるものなので、「差止めの訴え」を提起します(3条7項)。

差止めの訴えの要件は以下のとおりです。

差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない(37条の4)。

本問では、一定の処分(出席停止の懲罰)がされることにより重大な損害(議員としての職責を果たすことができない)を生ずるおそれがある場合に該当します。また、損害を避けるため他に適当な方法はないため、差止めの訴えを提起できることになります。

このことから、行政事件訴訟にはどのような種類があるのか、どのような場面で使うかといった知識を整理しておく必要があることがわかります。これらは基本書で確認するのもよいですし、条文だと端的に確認することができます。条文の表現で理解できないときは、基本書等で確認するとよいでしょう。

回答としては、「出席停止の懲罰の差止訴訟を提起する」などと記述します。

③次の会期の議会が招集されるまで1か月程度の短い期間しかない

今回は、「次の会期の議会が招集されるまで1か月程度の短い期間しかないこと」を考慮に入れる必要があるのでした。また、問題文に「仮の救済手段も含め」と丁寧に書いてくれています。

ここで、仮の救済である「仮の差止め」を提起することが考えられます。

差止めの訴えの提起があった場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもって、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることができる(37条の5第2項)。

仮の救済で重要なのは、「差止めの訴えの提起があった場合において」と規定している点です。仮の救済はあくまで仮なので、単体では申し立てることはできません。そのため、差止めの訴えを提起した上で、仮の差止めを申し立てる必要があります。なお、仮の救済は、このほかに仮の義務付けもあるので、条文を確認しておきましょう(37条の5第1項)。

回答としては、「仮の差止めを申し立てる」などと記述します。

ここまでで、「Y市に対して」「出席停止の懲罰の差止訴訟を提起する」「仮の差止めを申し立てる」といった内容を答えればよいことがわかりました。あとは、日本語として意味が通じるように、読点などを調整しましょう。

例:Y市に対して出席停止の懲罰の差止訴訟を提起するとともに、仮の差止めを申し立てる。(41字)

問題45 民法

令和5年度行政書士試験 問題45

令和5年度行政書士試験 問題45

問題45と46は、民法からの出題です。例年、民法は1問は比較的解きやすく、もう1問は難易度が高めの出題がされる傾向があります。記述式は、満点を狙うというより、基本的な論点を落とさないようにするという姿勢で臨むようにしましょう。

それでは、行政法のときと同じように、何が問われているか設問を読んでみましょう。本問は、「Aがこの保険金に対して優先弁済権を行使するためには、民法の規定および判例に照らし、どのような法的手段によって何をしなければならないか」となっています。

これで、本問では、①どのような法的手段によって、②何をしなければならないかを答えることがわかりました。

続いて、問題文を頭から読んでいきましょう。

Aさんは、貸金債権の担保をするために甲建物に抵当権を設定しました。これで、Bさんが債務不履行になったときは、甲を競売するなどしてお金を回収することができます。しかし、Bさんが債務不履行に陥った後、甲が火災によって焼失してしまいました。つまり、Aさんにとっては、貸金債権を担保していた物がなくなってしまったということです。そこに、保険会社CからBに火災保険金が支払われることになりました。そこで、Aさんはどうすべきかが問われています。これは、抵当権の物上代位になります。

抵当権の物上代位は、先取特権の条文を準用する形で規定されています。

先取特権[抵当権]は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者[抵当権者]は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(304条1項)。

・・・

第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。(372条)。

本問についてみると、「抵当権は、その目的物(甲)の滅失によって債務者(B)が受けるべき金銭(保険金債権)に対しても、行使することができる。ただし、抵当権者(A)は、その払い渡し前に差し押さえをしなければならない。」となります。

差押えが要求されるのは、第三債務者(保険会社C)が二重弁済を強いられる危険から保護するためです。抵当権の効力は、物上代位の目的となる債権(火災保険金債権)にも及ぶため、第三債務者が債務者(B)に弁済しても、債権の消滅を抵当権者(A)に対抗できなくなってしまいます。そこで、差押えを要件とすることにより、第三債務者は、差押え前は債務者に、差押え後は抵当権者に弁済すればよいというようにされています。

ここまでで、「物上代位によって」「保険金の払渡し前に、差し押さえなければならない」といった内容を答えればよいことがわかりました。これだけだと少し文字数が足りないので、補則しましょう。

例:物上代位により保険金の払渡し前に、保険金債権を差し押さえなければならない。(38文字)

問題46 民法

令和5年度行政書士試験 問題46

令和5年度行政書士試験 問題46

続いて、問題46をみてみましょう。本問は、「Aが、Bに対し、権利行使ができる根拠を示した上で、AのBに対する修補請求以外の3つの権利行使の方法」となっています。

それでは、問題文を頭から読んでいきましょう。

Aさんは、Bさんとの間に住宅を建築する請負契約をしました。Aさんは、完成した住宅の引渡しを受けましたが、雨漏りがあることが判明しました。そこで、Aさんが権利行使できる根拠とその方法について問われています。これは請負人の担保責任です。ただ、本問は、請負契約という、行政書士試験にしては少し細かい論点なので、何を書けばよいか迷ってしまう方もいると思います。ここは、満点を狙うより、部分点を狙っていけるようにしましょう。

本問は、請負契約なので、請負について条文を見てみましょう。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(632条)。

本問では、当事者の一方(Bさん)がある仕事(Aさんが所有する土地上に住宅を建築すること)を完成することを約しています。Aさんは、完成した住宅の引渡しを受けましたが、その引渡し直後に当該住宅の雨漏りが3か所生じていることが判明しました。それでは、請負人の担保責任を見てみましょう。

請負人の担保責任は、売買の条文を準用しています。

この節[売買]の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない(559条)。

請負は、「報酬を支払うことを約する」ので、有償契約にあたります。売買の契約不適合責任は、追完請求権(562条)、代金減額請求権(563条)、損害賠償請求権(564条、415条)、解除権(564条、541条、542条)の4つがありました。これが原則です。

本問では、この原則部分について聞かれているので、権利行使ができる根拠は「請負契約の担保責任」、AのBに対する修補以外の3つの権利行使の方法は、「代金減額請求、損害賠償請求、解除」となります。

本問で聞かれているのはここまでですが、請負契約においては、担保責任の制限があります。

請負人種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときは、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない(636条)。

契約不適合があった場合、注文者は、追完請求などができるのが原則ですが、注文者が材料を供していたり、注文者が指図したことによって生じた不適合については、履行の追完等はできないとされています。注文者の言うとおりにして不適合が起きたのに追完請求を認めては、請負人の負担が大きいからです。ただし、請負人がその材料や指図は不適当であることを知っていながら告げなかったときは、請負人を保護する必要はなくなるので、原則通り、履行の追完等ができるように調整されています。

なお、本問では、「B(請負人)の供する材料を用い、また、同住宅の設計もBに委ねることとされた」とあるので、この請負人の担保責任の制限は適用されません。請負人の担保責任の制限が適用されないながら、設問では条文が意識されているのがわかります。

ここまでで、「請負契約の担保責任」、「代金減額請求、損害賠償請求、解除」といった内容を答えればよいことがわかりました。これを元に文章にしてみましょう。

例:請負契約の担保責任を根拠に、代金減額請求、損害賠償、解除を請求することができる。(40字)

参考:過去の試験問題 | 行政書士試験研究センター

SOMEYA, M.

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好き】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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東京都生まれ。沖縄県在住。主に行政書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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