会社法の株式会社の株式の株式会社による自己の株式の取得から総則について学習します。今回から自己の株式の取得に入ります。まずは、全体像を見ていきましょう。
自己の株式の取得とは、株式会社が発行した株式を株主から取得することをいいます。条文では、「自己の株式の取得」となっていますが「自己株式の取得」と呼ぶこともあります。
第4節「株式会社による自己の株式の取得」は、全6款で構成されています。
- 第1款 総則
- 第2款 株主との合意による取得
- 第3款 取得請求権付株式及び取得条項付株式の取得
- 第4款 全部取得条項付種類株式の取得
- 第5款 相続人等に対する売渡しの請求
- 第6款 株式の消却
今回学習する総則は155条だけなので、条文を見てみましょう。
① 第107条第2項第3号イ[取得条項付株式]の事由が生じた場合
② 第138条第1号ハ又は第2号ハ[譲渡等承認請求]の請求があった場合
③ 次条第1項[株主との合意による自己株式の取得]の決議があった場合
④ 第166条第1項[取得請求権付株式]の規定による請求があった場合
⑤ 第171条第1項[全部取得条項付種類株式]の決議があった場合
⑥ 第176条第1項[売渡しの請求]の規定による請求をした場合
⑦ 第192条第1項[単元未満株主の買取請求]の規定による請求があった場合
⑧ 第197条第3項各号[株式の競売]に掲げる事項を定めた場合
⑨ 第234条第4項各号[1に満たない端数の処理]に掲げる事項を定めた場合
⑩ 他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得する場合
⑪ 合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場合
⑫ 吸収分割をする会社から当該株式会社の株式を承継する場合
⑬ 前各号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合
自己株式の取得、とりわけ有償取得は、特定の株主に対し、株式と引換えに会社財産を交付します。そのため、特定の株主にのみ株式の売却の機会を与えれば、不公平になり、また、特定の株主から公正な価格よりも高い価格で株式を買い取れば、他の株主の利益を害することになります。そこで、会社法は、株式会社は、一定の場合に限り、自己株式を取得することができるように規制しています。
155条は1号から13号までありますが、ここですべてを覚えるのは大変です。取得条項付株式や取得請求権付株式、単元未満株主の買取請求などそれぞれの場所で、株主が、株式会社に対し、株式を売却することができる、あるいは売渡し請求されるといった内容を理解記憶するようにしましょう。
次回からは、株式会社が自己株式を取得する場面ごとの規制について学習します。自己株式の取得は、商業登記法でも重要な部分なので、まずは会社法で実体面について丁寧に学習を進めましょう。