【不動産登記法】質権に関する登記について、存続期間や違約金、賠償額などのまとめ

不動産登記法

不動産登記法の登記手続の権利に関する登記の担保権等に関する登記から質権に関する登記について学習します。

不動産登記法>登記手続>権利に関する登記>担保権等に関する登記>質権

質権の登記等の登記事項

質権又は転質の登記の登記事項は、第59条各号[権利に関する登記の登記事項]及び第83条第1項各号[担保権の登記の登記事項]に掲げるもののほか、次のとおりとする(95条1項)。
① 存続期間の定めがあるときは、その定め
② 利息に関する定めがあるときは、その定め
③ 違約金又は賠償額の定めがあるときは、その定め
④ 債権に付した条件があるときは、その条件
⑤ 民法第346条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
⑥ 民法第359条の規定によりその設定行為について別段の定め(同法第356条又は第357条に規定するものに限る。)があるときは、その定め
⑦ 民法第361条において準用する同法第370条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め

1号:存続期間

1号について、不動産質権の存続期間は、10年を超えることができません(民法360条)。10年を超えると質権設定者に過大な負担を課すことになってしまうからです。存続期間の定めがあるときは、その定めを登記します。

3号:違約金・賠償額

3号について、細かいところですが、違約金は、抵当権では設定できなかったことと比較しておきましょう。なお、賠償額は抵当権でも定めることができます。質権は、債権者が使用収益するため、使用収益妨害に対して違約金を定める必要性があります。一方、抵当権は、債務者が使用収益しているため、この点は考慮する必要がありません。もし、債務不履行があった場合は、損害金を求めればよいからです。このように考えると、質権と抵当権で違約金の登記の可否が異なる点が理解できると思います。

5号:民法第346条別段の定め

5号について、民法をみてみましょう。

質権は、元本、利息、違約金、質権の実行の費用、質物の保存の費用及び債務の不履行又は質物の隠れた瑕疵によって生じた損害の賠償を担保する。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない(民法346条)。

質権は、元本や利息、違約金なども含めて担保します。ただし、契約によって、別段の定めをすることもできます。この別段の定めがあるときは、登記をします。

6号:民法第359条別段の定め

6号について、民法をみてみましょう。

不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる(民法356条)。

不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う(民法357条)。

不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない(民法358条)。

前3条の規定は、設定行為に別段の定めがあるとき、又は担保不動産収益執行の開始があったときは、適用しない(民法359条)。

不動産質権者は、不動産を使用収益することができます。ただ、使用収益しているため、不動産質権者は、管理の費用等を負担します。また、債権の利息を請求することはできません。質権は、ただでさえ、使用収益できるため、二重で利益を得ないように配慮されていると考えることができます。もっとも、これらは別段の定めをすることができます。この定めがあるときは、登記をします。

カッコ書きで「(同法第356条又は第357条に規定するものに限る。)」とあるのは、358条が規定する利息については、最初から95条1項2号で登記できるとされているからです。

7号:民法第370条別段の定め

7号について、条文構造を把握しましょう。

不動産質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、次章(抵当権)の規定を準用する(民法361条)。

抵当権[質権]は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない(民法370条)。

抵当権のときと同じように、質権の効力は、不動産に付加して一体となっている物に及びます。ただし、契約時に別段の定めを設定することができます。この別段の定めがあるときは、登記をします。

質権に限らず、基本的な考え方として、原則に対して、異なる定めがされているときは、登記を見た人がその定めを把握できるように登記をするようになっていると考えることができます。

SOMEYA, M.

東京都生まれ。沖縄県在住。司法書士試験対策について発信しているブログです。【好きなもの】沖縄料理・ちゅらさん・Cocco・龍が如く3

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