ここでは、行政不服審査法の審査請求から、「審査請求の手続」について解説します。
見失わないように、条文の場所を示しておきます。
審査請求は、第2章にあります。
- 第1章:総則
- 第2章:審査請求
- 第3章:再調査の請求
- 第4章:再審査請求
- 第5章:行政不服審査会
- 第6章:補則
そして、今回はそのうち「審査請求の手続」になります。
- 第1節:審査庁及び審理関係人
- 第2節:審査請求の手続
- 第3節:審理手続
- 第4節:行政不服審査会等への諮問
- 第5節:裁決
それでは、第2節の「審査請求の手続」を見てみましょう。
- 第18条:審査請求期間
- 第19条:審査請求書の提出
- 第20条:口頭による審査請求
- 第21条:処分庁等を経由する審査請求
- 第22条:誤った教示をした場合の救済
- 第23条:審査請求書の補正
- 第24条:審理手続を経ないでする却下裁決
- 第25条:執行停止
- 第26条:執行停止の取消し
- 第27条:審査請求の取下げ
第2節では、審査請求をするところから審理が始まる前までの手続きについて規定されています。
以下、本試験で重要な部分を解説します。
目次
第18条:審査請求期間
第18条 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して1月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
審査請求の期間は、主観で3か月、客観で1年です。なお、再調査の請求をしたときの主観の期間は、1か月となっています。参考までに、再審査請求も1か月です。審査請求の場合は初めてなので、主観は3か月と理解しやすいと思います。一方、再調査請求のあとの審査請求や再審査請求は、一度自分が不服申立てをしているので、期間が短くなっていると考えると理解しやすいと思います。
第19条:審査請求書の提出
第19条 審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければならない。
行政不服申立は、簡易迅速にすることができるように、書面審理が中心になっています。行政事件訴訟が口頭審理主義であるのと比較をしておきましょう。
第20条:口頭による審査請求
第20条 口頭で審査請求をする場合には、前条第2項から第5項までに規定する事項を陳述しなければならない。この場合において、陳述を受けた行政庁は、その陳述の内容を録取し、これを陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認しなければならない。
審査請求が口頭でできる場合、19条2項から5項の事項(審査請求人の氏名や住所、処分の内容等)を陳述します。
第21条:処分庁等を経由する審査請求
第21条 審査請求をすべき行政庁が処分庁等と異なる場合における審査請求は、処分庁等を経由してすることができる。この場合において、審査請求人は、処分庁等に審査請求書を提出し、又は処分庁等に対し第19条第2項から第5項までに規定する事項を陳述するものとする。
第22条:誤った教示をした場合の救済
処分をする場合、行政不服申立ができることを教示する必要があります。このとき、もし誤った教示をした場合の救済について規定されています。
審査請求をすることができる処分につき、誤った行政庁を教示した場合において、その行政庁に書面で審査請求がされたときは、速やかに、審査請求書を審査庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければなりません。(22条1項)。
再調査の請求をすることができない処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示した場合において、再調査の請求がされたときは、速やかに、再調査の請求書を審査庁に送付し、かつ、その旨を再調査の請求人に通知しなければなりません(22条3項)。
再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、再調査の請求がされた場合であって、再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書を審査庁に送付しなければなりません(22条4項)。
第23条:審査請求書の補正
第23条 審査請求書が第19条の規定に違反する場合には、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。
不備があったときは、補正すべきことを命じる必要があります(23条)。
第24条:審理手続を経ないでする却下裁決
第24条 前条の場合において、審査請求人が同条の期間内に不備を補正しないときは、審査庁は、次節に規定する審理手続を経ないで、裁決で、当該審査請求を却下することができる。
もし、補正しないときは、裁決で却下することができます(24条)。
第25条:執行停止
行政不服審査法と行政事件訴訟法は、偶然にも25条に執行停止について定められています。執行停止については、細かいことが問われることがあるので、整理しておきましょう。
審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げません(25条1項)。
審査請求があったからといって処分が停止するといったことはないといことです。
処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることができます(25条2項)。
処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁は、必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができます(25条3項本文)。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない(25条3項但書)。
ここで、処分庁の上級行政庁、処分庁、いずれでもない審査庁で条件が分岐されました。
上級行政庁 | 処分庁 | その他 | |
申立て | ◯ | ◯ | ◯ |
職権 | ◯ | ◯ | ✕ |
処分の効力等 | ◯ | ◯ | ◯ |
その他の措置 | ◯ | ◯ | ✕ |
いずれでもない審査庁の場合は、職権が不可、その他の措置が不可といったように一歩下がっていることがわかります。
処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は、執行停止をしなければなりません(25条4項本文)。ただし、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りではありません(25条4項但書)。
処分の効力の停止は、処分の効力の停止以外の措置によって目的を達することができるときは、することができません(25条6項)。
第26条:執行停止の取消し
第26条 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。
執行停止をした後であっても、事情が変更したときは、執行停止を取り消すことができます。つまり、執行をするということです。
第27条:審査請求の取下げ
審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができます(27条1項)。審査請求の取下げは、書面でしなければなりません(27条2項)。
取下げをするときは、言った言わないが問題になるため、基本的に書面が要求されます。